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大容量バッテリー計測のパラダイムシフト Tier1メーカーが模索するEIS計測の活用



電気自動車(EV)や定置型蓄電システム(ESS)の世界的な普及にともなって、リチウムイオンバッテリーの需要は急速に拡大しています。バッテリー業界をリードするTier1メーカーでは、内部抵抗*1の検査に、EIS*2計測の導入を模索する動きが出始めています。
新しい計測手法によりパラダイムシフトを探求するか、現在の計測手法の向上を追求するか。これはリチウムイオンバッテリーの大容量化を追求するメーカーが、近い将来判断を迫られる可能性がある選択です。

*1 内部抵抗:バッテリーの状態を表す重要な指標のひとつ。バッテリー自体がもつ電流の流れにくさを表す。バッテリーの生産ラインでは多くの場合バッテリーテスタを用いて計測され、測定周波数1kHzの交流信号を印加する方法が一般的である。

*2 EIS:電気化学インピーダンス分光法。バッテリーに交流電圧を印加し、周波数を変化させながらインピーダンス(交流抵抗)を測定することで、バッテリー内部の電気化学的な特性を詳細に分析する手法。


■背景
限りある資源の持続可能な利用のために、使用済みバッテリーの再利用やリサイクルの促進によるバッテリーサーキュラーエコノミー*3の実現が喫緊の課題となっています。バッテリーの効率的なリサイクルのためには、バッテリーの生産から廃棄に至るまでのライフサイクル全体におけるデータの記録と管理が重要です。EUでは、バッテリーのバリューチェーンにおける透明性、循環性、持続可能性を高めるために、バッテリーパスポート*4の導入が進められています。記録データの活用によるバッテリーの残存価値評価の改善や、リサイクル効率の向上など新しい価値の創出が期待されています。

*3 バッテリーサーキュラーエコノミー: バッテリーの設計、生産、使用、再利用、リサイクルの各段階で資源の効率的な利用と循環を促進することで、環境負荷を最小限に抑えつつ、経済的価値を最大化することを目指す経済モデル。

*4 バッテリーパスポート:バッテリーの製造、使用、リサイクルに関する情報を電子的に記録・管理することで、バッテリーのライフサイクル全体でトレーサビリティ(追跡可能性)を確保するシステム。


また一方、EVの航続距離延伸やESSの大規模化を目的に新しいバッテリーが開発され、大容量化が進んでいます。特に高性能なEVに搭載される新型バッテリーは、サイズや内部構造におおきな変化が起きています。バッテリーが大容量化すると、内部抵抗は小さくなります。近年、バッテリーの飛躍的な大容量化により内部抵抗は非常に小さくなり、正確な計測が困難になりつつあります。またサイズや内部構造が従来とは大幅に変更されたバッテリーは、これまで業界スタンダードとされてきた測定周波数1 kHz固定のバッテリーテスタでは品質を正しく評価できないという課題も発生しています。

現在バッテリー業界を牽引するTier1メーカーでは、次世代の内部抵抗検査手法の模索が始まっています。バッテリーの内部抵抗計測には、新しい構造や大容量化に対応しつつサーキュラーエコノミーの実現を可能にする新たなソリューションが求められています。


バッテリーインピーダンスメータBT4560(左)と バッテリーテスタBT6075(右)


■EIS計測による詳細なデータ取得
バッテリーパスポートの導入を見据え、バッテリーメーカー各社は生産時の詳細なデータ取得と管理の方法を模索しています。その一つの解決策として注目されているのが、EIS(電気化学インピーダンス分光法)を用いた内部抵抗の計測です。広い周波数範囲で複数の周波数を用いて計測を行うことで、バッテリーセルの内部状態をより詳細に分析し、記録に残すことができます。
当社は0.01 Hz ~ 1.05 kHzの周波数範囲でEIS計測が可能なバッテリーインピーダンスメータBT4560を従来より提案してきました。現在BT4560は開発研究用途だけでなく、生産ラインの検査装置としての活用も注目されています。
例えば測定周波数0.01 Hzでの計測により、バッテリーセルが実際に駆動する直流に近い状態の内部抵抗を知ることができます。また大容量のバッテリーセルでは、測定周波数1 kHzよりも100 Hzの方が誘導成分の影響が小さく内部抵抗としての値を正確に表しているケースも存在します。
Tier1メーカーはEIS計測により最新のバッテリーに適合した測定条件を模索しており、将来的なバッテリーのライフサイクルにおけるデータ活用に備えています。

■大容量化に対応する高精度計測
バッテリーの大容量化にともなって内部抵抗の値は非常に小さくなっており、計測の精度や再現性に課題のあるケースも増えています。バッテリーテスタBT6075は測定周波数1 kHzのバッテリーテスタとして、精度、安定性、測定スピードのすべてにおいて世界最高レベルの性能を誇る製品です。現在の手法での内部抵抗計測のさらなる高度化を求めるユーザー向けに、性能を極限まで追求しています。
 


新しい計測手法によりパラダイムシフトを探求するか、現在の計測手法の向上を追求するか。バッテリー業界は今、データトレーサビリティ導入と大容量化という大きな転換点を迎えています。HIOKIは、EIS計測を可能にするBT4560と、従来手法を極限まで追求したBT6075の2つのアプローチにより、バッテリーサーキュラーエコノミーの実現と次世代のバッテリー開発を力強くサポートしていきます。

■バッテリーインピーダンスメータ BT4560の特長
幅広い周波数で、様々なタイプの電池の内部抵抗測定に対応可能なバッテリーインピーダンスメータ。マイナーチェンジにより測定周波数下限を0.1 Hzから0.01 Hzに拡大。
測定周波数:0.01 Hz ~ 1.05 kHz 
最大入力電圧:5 V
抵抗測定レンジ: 3 m, 10 m, 100 mΩ 
最小分解能:0.1 μΩ(3 mΩレンジ、10 mΩレンジ)

■バッテリテスタ BT6075の特長
測定周波数1 kHzで、高精度かつ高速、安定したバッテリーの内部抵抗計測が可能。バッテリーテスタの最上位クラスモデル。
測定周波数:1 kHz 
最大入力電圧:100 V
抵抗測定レンジ: 3 mΩ、30 mΩ、300 mΩ 、3 Ω、30 Ω
最小分解能:0.01 μΩ(3 mΩレンジ)



【本件に関するお問い合わせ先】
マーケティングコミュニケーション部 
TEL:0268-28-0555(代表)

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