安全にお使いいただくために

測定器を安全に使用していただくために、取扱説明書の「仕様」に以下の項目を記載しています。


1.測定カテゴリについて

安全性に関する規格(EN61010 シリーズ、JIS C 1010 シリーズ)では、測定箇所の対地間定格電圧や電流容量(短絡故障のときに流れる電流の大きさ)、および測定箇所に生じる過渡過電圧に基づいて、測定カテゴリⅡからⅣに分類しています。


測定カテゴリⅡ
コンセントに直接接続する機器の電源プラグから機器の電源回路まで
測定カテゴリⅢ
分電盤から電力を直接取り込む機器(固定設備など)の電源配線と電源回路、および分電盤からコンセントの裏側の配線端子までの配電路
測定カテゴリⅣ
建造物への引き込み電路、引込口から電力量メータおよび分電盤までの電路

測定カテゴリⅡはCAT II、測定カテゴリⅢはCAT III、測定カテゴリⅣはCAT IV とあらわし、測定器の測定端子付近に表示しています。

カテゴリの数値の小さい測定器で、数値の大きい測定箇所を測定すると、重大な事故につながる恐れがありますので、絶対に避けてください。

カテゴリの見方

2.予想される過渡過電圧について

工場などの電力ラインでは、電源電圧の10 倍程度の過渡的な過電圧(インパルス状の電圧)を含むことがあります。
測定箇所の過渡過電圧をあらかじめ予測して、その過渡過電圧にも耐えるような安全設計が必要です。

安全性に関する規格には、対地間電圧と測定カテゴリから、以下のような過渡過電圧の値が規定されています。


対地間電圧 [V] 過渡過電圧の値 [V]
  CAT Ⅱ CAT Ⅲ CAT Ⅳ
300 2500 4000 6000
600 4000 6000 8000
1000 6000 8000 12000
1500 8000 10000 15000
2000 12000 15000 18000

測定箇所の対地間電圧が600V であるとすると、測定カテゴリIVの場所では8000V の過渡過電圧が含まれる可能性があります。
CAT IV の測定器は8000V の過渡過電圧に耐えるように設計されています。CAT III の測定器であって6000V までしか耐えられないものは、8000V の過渡過電圧が計測器の内部に入ると絶縁破壊を起こし、感電に至る危険があります。

3.汚染度について

計測器の表面に汚染物質が付着すると、絶縁性能が低下し、感電の危険が高まります。
安全に関する規格では、計測器が使われる環境を汚染度1から汚染度4に分類しています。


汚染度1
汚染がないか、または乾燥した汚染物質(導電性でない汚れ、埃など)だけが存在し、汚染が計測器の絶縁性能に影響しない環境
汚染度2
乾燥した汚染物質(導電性でない汚れ、埃など)だけが存在するが、計測器が結露することによって、汚染物質が一時的に計測器の絶縁性能を低下させるような環境
汚染度3
導電性の汚染物質(水、土など)が存在するため、汚染物質の付着の状態によっては計測器の絶縁性能に影響が出る環境。または、湿度が高いため、導電性でない汚染であっても結露することで計測器表面が濡れている状態が比較的長く続くような環境
汚染度4
導電性の汚染物質(水、土など)が計測器の広い範囲に付着したり、雨でぬれたりすることによって継続的に絶縁性能を低下させるような環境

汚染度2の計測器は上記の汚染度1もしくは汚染度2の環境で安全性を損なうことなく使用できることを、汚染度3の計測器は汚染度1から汚染度3の環境で使用できることを示します。

4.高度について

高度(標高)が高くなるにしたがって気圧が下がり、放電(空気の絶縁破壊)が起こりやすくなります。このため、安全に関する規格では、高度2000m 以下という使用場所を想定した安全設計が規定されています。高度2000m を超える場所で使用する場合、危険な電圧が掛かっている部分と人が触れる部分との間隔をより広くとる、といった対応が必要です。



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