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電気自動車の急速な普及に伴い、車載モーターの需要が増えています。走行性能や安全性に大きく係わる車載モーターは、高性能であることはもちろん、高品質、高信頼性を備えていることも必要です。
HIOKIのインパルス巻線試験器ST4030Aは、巻線の検査において、今まで検査できなかった状態での検査を可能とし、検出できなかった微小な不良も見逃しません。モーター生産ラインの各検査工程において、早い段階で不具合を検出することができるので、工程戻りを無くし、工数削減、作業効率向上に大いに貢献します。
モーターやトランスなどに使用される巻線では、巻線間の絶縁性能の維持が必要です。一般的に電気自動車のモーターを駆動するインバーターは、高電圧、高速スイッチングに対応した半導体が活用されることで、進化しています。インバーターの出力電圧はスイッチング動作のたびにサージ電圧が発生しており、モーター内の巻線間には、瞬間的に高電圧が加わることになります。そのため、絶縁不良があると部分放電が発生し、長い時間をかけて皮膜が侵食されて絶縁劣化が進行します。絶縁劣化が進行することで、巻き線間の短絡や絶縁破壊に至り、モーターが故障するだけでなく、発火の危険もあります。
近年、電気自動車の普及や自動運転機能の進歩などにより、車載部品の高性能化が加速しています。それに伴い、車載モーターの巻線に対する信頼性要求も年々高くなってきました。故障や重大事故を防ぐため、わずかな不良個所も検査で見逃すわけにはいきません。
巻線の絶縁性能検査で用いられるのが、インパルス巻線試験器です。インパルス巻線試験器では、巻線の両端にインパルス電圧を印加し、その際の両端電圧波形(応答波形)を検出します。検査対象の巻線から検出された応答波形を、良品の巻線から得られた応答波形を基準としてズレを比較することで、良否の判定を行います。巻線の品質評価では欠かすことのできない測定器です。
応答波形
しかし、従来のインパルス巻線試験器を使用したモーター巻線の検査では、いくつかの課題がありました。
従来の応答波形の比較では、指定した区間の波形面積を比較することで良品と不良品の判定を行っていました。この比較方法では、面積差が数%と小さい場合は良否判定が困難です。1ターンショートのような、応答波形の変化が極微小な不具合を見つけることができません。
巻線に部分放電が起きていることに気づかず使用しつづけると、絶縁部分の劣化が進み、短絡や絶縁破壊の原因となります。早い段階で部分放電を検出しておくことで、大きな問題となることを防ぐことができます。しかし、部分放電は非常に小さい放電であり、電圧差が小さく、ノイズ成分との切り分けが難しいため、簡単に検出することができません。
小型機械から大型機械までをカバーするモーターの開発から製造を行うA社では、コイル状態で問題がなくとも、モーター完成時に挙動不良が発生する問題が頻発していました。分解して検査したところ、ローターをステーターに組付ける際に巻線に傷がついて絶縁不良が発生していたことが判明しました。
インパルス巻線試験器は、ローター組付け状態で検査を行うと、組付け位置によりローターとステーターとの間の浮遊容量が変化するので、検出される応答波形が変化します。そのため、応答波形の面積比較による従来の方法では、検査結果にバラツキが発生して正しく測定することができませんでした。
ST4030Aは、従来の試験器の課題を全て解決します。
ST4030Aでは、従来の波形による面積比較とともに、LC値、RC値による比較、判定が行えます。LC値、RC値とは、インパルス巻線試験(レアショート試験、レイヤーショート試験)の応答波形を数値化したものです。2つの値を2 次元平面にマッピングすると、良品と不良品では、LC値、RC 値の分布に違いが生じます。このように、応答波形を数値化して定量的に扱うことにより、面積比較では変化が微小で判別が難しい、1ターンショートなどの不具合も検出することが可能となりました。 *測定条件によります。
波形による面積比較
面積差が数%だと良否判定か困難
応答波形の数値化
良品と不良品の分布が異なる
放電は電圧差が小さく、高周波であるため、高精度な検出性能を必要としています。ST4030Aはサンプリング周波数200MHz、サンプリング分解能12bitの高速、高精度な波形検出能力により、ノイズに埋もれ隠れている微弱な部分放電を高精度に検出します。HIOKI オリジナルフィルター搭載の放電検出機能ST9000をオプションとして用いることで、応答波形に現れる高周波成分からノイズ成分を除去し、部分放電成分だけを抽出しして判定します。そして、放電検出用アンテナなどの周辺設備を別途用いなくても部分放電の有無を手軽に検出できるので、予知保全として早い段階から問題を解決することができます。長期間にわたり安全性が求められる車載モーターでは、徐々に皮膜を浸食して絶縁劣化を進行させる可能性がある部分放電は見逃せません。ST4030Aにより確実に取り除けます。
ノイズ成分と分離
高周波放電成分だけを、HIOKI独自のフィルタリングにより抽出
ST4030Aでは、応答波形を数値化したLC値、RC値の分布の違いにより良品と不良品を判定することが可能です。ローター組付け状態での検査で応答波形が変化しても、値の分布は良品、不良品で異なるため、良品、不良品判定エリアを作成することで、ローター組付け状態での検査ができます。これにより、ローター組付け時で不具合を検出できるようになり、完成後に不具合が出て、工程を戻って再び検査、組み立てを行う工数が削減されます。
A社ではST4030Aのデモ機を貸し出してローター組付けの状態で試したところ、安定して計測できることが確認できました。それに合わせてLC値-RC値による1ターンのレアショートを検出できることも確認でき、工程不良の検出率アップを目的に採用となりました。
ローター回転時のLC・RC 値分布
ローターを回して LC・RC 値をサンフリングしていくと、健全相に対して不良相の分布が異なります
この他にも、ST4030Aは、お客様の課題を解決する高い性能を備えています。
印加電圧のばらつきが小さく、高い測定安定性を持っています。同一ワークを試験した時に測定値の機体差が小さいので、機体を入れ替えても基準となる良品の波形データがそのまま使用可能です。そして確度保証条件下での電圧検出確度も規定していることで信頼性を保証しています。また、IEC規格に対応した試験も可能なので、より信頼性のある検査を行えます。
印加電圧のばらつきイメージ
上の波形:波形のばらつきがあり、検出が難しいショート状態がある。
下の波形:波形のばらつきが小さく、精度良く不良品の検出ができる。
例えば、増産に伴い複数台を同時に工場に導入したB社では、デモ機により対象ワークのコイルを実測し、問題なく安定して測定できることを確認し採用となりました。機体による測定値のバラつきを気にすることなく、基準となる良品波形データの検査に活用しています。測定が安定したことにより、さらに厳しいLC値、RC値を使用した判定基準での検査も可能となり、応答波形を数値化した運用がはじまりました。
また、タッチパネルを用いた操作画面は、測定器の操作に不慣れな作業者にも理解しやすいので、導入時の測定器の入れ替えもスムーズに進みました。測定画面の画像をBMPファイル形式で保存できる機能も、解析がやりやすいと、製造部門で好評を得ています。開発部門では絶縁破壊電圧(BDV)試験機能が好評でした。 HIOKIは抵抗計やLCRメータ、絶縁耐圧試験器など、モーターに係わる測定器を扱っています。製造部門、開発部門の双方からの評価は、計測メーカーの統一化を図る後押しにもなっています。
電気自動車を中心に、様々な移動手段の電動化が進んでいます。また、カーボンニュートラルの観点から、自然エネルギーを活用した発電も盛んになってきました。これらに使用されるモーターや発電機は、高出力が進み、駆動電圧が年々上昇しています。
駆動電圧が高くなれば、試験電圧も上がります。測定器もそれに対応しなければなりません。HIOKIのインパルス巻線試験器は、今後の更なる高電圧化にも対応できるように、性能の向上を目指します。また、現状を踏まえながら、将来を見据える形で、新たな機能追加、改善も進めてまいります。
HIOKIでは、お客様の需要に応えられる機能を備えた測定器を幅広くそろえています。デモ機も用意していますので、機能を試してみたいお客様は是非お問い合わせください。サンプル品をお預かりしての測定テストも対応可能です。解決したい測定の課題や、気になる測定器などありましたら、お気軽にご相談ください。
インパルス巻線試験器 ST4030A
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