LCR メータによるモーターのワニス含浸状態検査
概要
コイルを巻いた後のモーターは、ワニス含浸処理を施します。ワニス含浸処理には、絶縁材料であるワニスが入ったタンクに浸す「滴下含浸」と、真空状態にしてワニスを充填させる「真空含浸」の 2 種類があります。ワニス含浸処理でコイル内部や絶縁紙の絶縁機能を補強し、さらにコイル内部にできてしまう隙間をワニスで埋めることで、絶縁劣化につながる湿気やほこりの侵入を防ぎます。 LCR メータを使って低い周波数で tanδを測定すると、モーターのワニス含侵状態の違いを明確に把握することができます。
含浸状態を確認するために
モーターのワニスの含浸状態の検査では、一般的に誘電正接計(tanδ計)を使用します。
誘電正接 tanδとは、電気絶縁材料の状態を数値で表す指標です。絶縁体(コイルと接地間)に交流電圧を印加すると、誘電損(誘電損失)が起こります。tanδは、この誘電損の度合いです。
誘電正接計は、50 Hz または 60 Hz の比較的高い電圧を印加して測定します。誘電正接は tanδ =1/2πfCRp で表します。この式において、周波数 f が低くなると tanδは大きくなります。つまり低い周波数で測定できれば、50 Hz/60 Hz を測定周波数とするよりも tanδの差が大きくなり、含浸状態の違いがわかりやすくなることが期待できます。LCR メータは 50 Hz/60 Hz より低い周波数で tanδを測定できます。
実測
■用意したサンプル:
滴下含浸の良品と不良品(ワニス量が少ないもの)、真空含浸の良品と不良品(真空度が足りなかったもの)の4つのステーターサンプル
■測定方法:
LCR メータを使いコイル-コア間のtanδを測定。絶縁物の測定になるので、シールドボックスを準備し、LCRメータのシールド端子に接続して測定しました。
■測定周波数:1 Hz, 5 Hz, 10 Hz, 20 Hz, 50 Hz, 60 Hzの6点
実測データ
すべての測定周波数において、良品と不良品の差が出ました。
測定周波数が低い方が、良品と不良品との差が明確に出ました。
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