アプリケーション・用途

EVの電力マネジメントに貢献する暗電流計測

EVを代表とするE-モビリティーにとって、航続距離の向上は最も重要な命題の1つです。これを実現するためには、バッテリーや大きな電力を使うパワートレインだけでなく、ECUや電装機器など、デバイスの消費電力や暗電流を把握することが重要です。このアプリケーションノートでは、HIOKIのデータロガーを使ってEV完成車両のECUや電装機器など各種デバイスの消費電流や暗電流を計測し、車両全体の電力マネジメントに活用するソリューションをご紹介します。




EVの電力マネジメントに必要な測定

車両をテストするエンジニアは、電費を改善するために電力マネジメントをしたいはずですが、それは簡単ではないでしょう。例えば、電装機器単体のテストでは問題がなくても、すべてを組み立てた完成車両でのテストで予期せぬ電力の消費や漏れ電流が発生すると、その原因となる箇所を特定することは困難です。なぜなら、それを特定するには多チャネルのパラメータを同時かつ長時間計測する必要があり、車両のメンテナンスで一般的に使用されるクランプメータではそのような測定は不可能だからです。
さらに、完成車両の電力マネジメントをするには次のような要求や課題があります。

・ECUやその他のデバイスの消費電流や暗電流を把握するために、数十mAオーダーのDC電流を高確度で測定したい
・ECUが予期しないタイミングで電流を消費しているが、原因となる箇所を特定できない
・ヒューズの定格が適正なのかを実車のヒューズボックスで確認したい
・ECUの暗電流が正常な範囲内であるか、さまざまな条件下で調べたい

EVの電力マネジメントを実現するためのHIOKIからのソリューション

消費電流に問題があるECUやデバイスを速やかに特定するには、同時に複数の消費電流や暗電流を測定、記録できるHIOKIのデータロガーLR8450が最適です。LR8450は最大330チャネルの測定と記録ができる多チャネルのロガーです。測定ユニットの組み合わせにより、電流、電圧、温度、振動などの物理量やCANバス上のデータを同時に観測できます。

データロガーLR8450と小型の高精度DC電流センサの組み合わせることで、ECUやデバイスの消費電流を同時に測定し、長時間記録することができます。さらにこのデータロガーはCANバスのデータも同時に測定し、車両の状態と消費電流プロファイルを統合して解析することができます。




LR8450とCT7812、CT7822がEVの電力マネジメントのための計測に最適な理由は以下の3つになります。

1. 人差し指サイズの高精度電流センサー 

2. CAN FDの取得をサポート 

3. ワイヤレスで車両全体のデータを取得(LR8450-01のみ)

EVの電力マネジメントを実現するためのHIOKIからのソリューション

1. 人差し指サイズの高精度電流センサ
AC/DC電流センサCT7812(2 A)、CT7822(20 A)は、フラックスゲート技術を採用しています。温度安定に優れているため、長時間にわたり高精度の消費電流を記録できます。小型のセンサは車両の込み入った配線にもアクセスしやすく、複数箇所の負荷の消費電流を測定するのに適しています。複数の負荷を同時に効率よく測定する場合には、ヒューズボックスから電流ループを介してセンサを接続するのがおすすめです。対象の負荷の配線を探す手間を省けます。

2. CAN FDの取得をサポート
LR8450は、現代の高機能な車両の標準的な通信バスであるCAN FDにも対応しています。CANおよびCAN FDのデータから車載のセンサ情報やECUの制御情報を取得し、消費電流の変動データと同じタイムプロットでリアルタイムにディスプレイに表示します。異常な電流値の増加が発生した時に、その時の車両状態を同時に確認できるので、状況把握がスムーズにできます。

3. ワイヤレスで車両全体のデータを取得
自動車の評価には、異なる箇所での測定データが必要です。車両のフロント部分にあるヒューズボックス、荷室内の温度、エンジンルームの廃熱、ボディーやシャフトの剛性など、複数の離れた箇所での測定が含まれます。しかし、これらのデータを同時に取得しようとすると、配線が複雑になる懸念があります。
幸いなことに、LR8450-01はワイヤレスモジュールをサポートしています。ワイヤレスモジュールはバッテリー駆動可能な独立した計測モジュールです。各測定モジュールを測定対象の近くに設置し、測定したデータを無線通信でデータロガー本体に転送できます。これにより複雑な配線を削減することができ作業効率が向上、さらに断線やノイズによるデータ損失のリスクが低減します。


センサーの選択

車両の負荷はDCの電流負荷です。HIOKIでは負荷の大きさに応じた適切なDC電流センサを提供しています。

AC/DCカレントセンサCT7812:負荷電流が2 A以下のデバイス向け
ECU、ワイパー、パワーウィンドウ、ウィンドウヒーター、ヘッドランプなど

AC/DCカレントセンサCT7822:負荷電流が2 Aを超えるデバイス(20 Aまで)
パワーステアリング、空調コンプレッサー、ウォーターポンプなど

さらに大きな電流測定のための電流センサオプションも提供しています。
AC /DCオートゼロカレントセンサCT7731(AC /DC 100 A) 
AC /DCオートゼロカレントセンサCT7736(AC /DC 600 A) 
AC /DCオートゼロカレントセンサCT7742(AC /DC 2000 A) 



まとめ

HIOKIのデータロガーLR8450と小型のAC/DCカレントセンサCT7812、CT7822は、EV車両の電費向上を支援します。
このソリューションでは、消費電流、温度、CAN/CAN FD、振動、ひずみなどのデータソースを同期して、1つの本体上でリアルタイムに観測できます。この機能は自動車だけでなく、建機やさまざまなE-モビリティーなど幅広い用途に適用可能です。

この製品について、詳しくはHIOKIのウェブサイトの製品ページをご覧ください。
デモ機のリクエスト、アプリケーションに関するご相談は、HIOKIの担当者にご連絡ください。

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