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LCRメータの原理・測定方法・使い方

LCRメータの測定原理や測定方法、使い方の基礎知識について解説します。インダクターやコンデンサなど電子部品ごとの測定方法や注意点など詳しく解説します。

01. LCRメータの測定原理

LCRメータの基本測定原理

LCRメータはインピーダンスと呼ばれる物理量を測定する計測器です。インピーダンスは量記号「Z」で現され、交流電流の流れにくさを示します。測定対象へ流れる電流「I」と両端電圧「V」より求めることができます。
インピーダンスは複素平面上のベクトルとして表現されますので、LCRメータでは、電流実効値と電圧実効値の比だけでなく電流波形と電圧波形の位相差を測定します。

※ LCRメータの「製品一覧」は、 こちら を参照願います。

LCRメータの測定回路 自動平衡ブリッジ法 

LCRメータの計測回路として多く採用されている回路方式のひとつに「自動平衡ブリッジ法」があげられます。Hc,Hp,Lp,Lcの4つの端子を有し、全ての端子が測定対象に接続されます。回路概略と各端子の機能は下記参照ください。

Hc:
周波数、振幅が制御された測定信号を測定対象へ印加する発生端子です。周波数は数mHzから数MHzまで、振幅は5mVから5Vまで制御可能です。

Hp:
測定対象のHi側電位を検出します。検出回路の入力インピーダンスは非常に高く、電圧降下なく正確に電位検出が可能です。

Lp:
測定対象のLo側電位を検出します。

Lc:
検出抵抗により測定対象に流れる電流を電圧変換し検出します。Lc端子の電位は常に0Vになるよう動作します。

LCRメータの測定回路 二端子法・五端子法・四端子対法

自動平衡ブリッジ法を採用したLCRメータでは4端子がすべてBNCコネクタとなっています。測定信号や検出信号へ外部からノイズが混入しないよう、シールドで覆っている同軸構造です。検出回路の構造としては、五端子法と四端子対法が一般的です。
もっとも簡易的な構造である二端子法の欠点を解決することができます。


二端子法:
測定対象に二端子で接触する構造です。測定値は配線抵抗や接触抵抗を含んだ結果となり、測定対象が低インピーダンスのときには影響が大きくなります。また、ケーブル間に浮遊容量が存在するため、高周波での測定や高インピーダンス測定のときには測定信号が測定対象だけでなく浮遊容量にも流れてしまい誤差要因となります。

五端子法:
信号電流用ケーブルと、電圧検出用ケーブルが独立していますので配線抵抗や接触抵抗の影響を低減することができます。また、シールドケーブルを使用しシールド同士を同電位にすることで浮遊容量の影響を低減します。低インピーダンスから高インピーダンスまで測定誤差を低減できる方式です。

四端子対法:
測定電流によって生じる磁界の影響を低減し、低インピーダンスから高インピーダンスまで測定誤差を低減できる方法です。ケーブルのシールドを利用して電流の往路と復路を重ねることで、発生する磁界を打ち消すことができます。

※ LCRメータの「製品一覧」は、 こちら を参照願います。

02. LCRメータの使い方 基礎知識

LCRメータの代表的な演算式

インピーダンスZは実数部(Rs)と虚数部(X)で構成されており、複素平面上に展開すると各パラメータ値を求めることができます。次式はインピーダンスの関係を演算式としてあらわしたものです。

等価回路モードについて

LCRメータは測定対象に流れる電流と測定対象の両端の電圧を計測しZとθを求めています。そして、L,C,Rなどの測定パラメータはZとθから算出しています。測定パラメータ値算出の演算式は、直列等価回路モードか並列等価回路モードかで異なります。LCRメータ側では、測定対象がどちらの回路モードなのかを判断することができませんので、誤差を低減するためには正しい等価回路モードを選択する必要があります。直列等価回路モードはCs(またはLs)と抵抗成分Rsが直列に接続していると仮定し、並列等価回路モードはCp(またはLp)と抵抗成分Rpが並列に接続していると仮定して計算しています。
一般的に、大容量のコンデンサや低インダクタンスなどの低インピーダンス素子(約100Ω以下)を測定する場合には直列等価回路モードが用いられ、低容量のコンデンサや高インダクタンスなどの高インピーダンス素子(約10kΩ以上)を測定する場合は、並列等価回路モードが用いられます。
各等価回路モードの測定値は計算により求めていますので、両方の値を表示することが可能ですが、測定対象によって適切な等価回路は異なりますので、ご注意ください。

オープン補正、ショート補正について

測定対象を測定する際に使用するテストフィクスチャには残留成分があり、図のような等価回路で表すことができます。そのため、測定値Zmは次の式のように残留成分を含んだ式として表されます。真値Zxを求めるためにはオープン残留成分とショート残留成分を求めて測定値を補正する必要があります。この補正をそれぞれオープン補正、ショート補正と呼びLCRメータにはこれらの機能が搭載されています。

Zm:
測定値

Zs:
ショート残留インピーダンス(Rs:残留抵抗、Ls:残留インダクタンス)

Yo:
オープン残留アドミタンス(Go:残留コンダクタンス、Co:浮遊容量)

Zx:
真値(測定対象のインピーダンス)

測定信号レベル

LCRメータから出力された測定信号は出力インピーダンスRと測定対象Zxで分圧されます。設定した測定信号レベルVがそのまま測定対象Zxに印加されるわけではありません。

LCRメータには3つの測定信号モードがあります。

開放電圧(V)モード:
図の測定信号レベルVを設定します。測定端子開放時の電圧です。

定電圧(CV)モード:
図のVx(測定対象Zxの端子間電圧)を設定にします。高誘電率のMLCCなどの電圧依存性のある測定対象を測定する場合に使用します。

定電流(CC)モード:
図のI(測定対象Zxに流れる電流)を設定します。コア入りのインダクタなどの電流依存性のある測定対象を測定する場合に使用します。

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