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抵抗測定 | 抵抗計やテスターによる抵抗測定方法

テスターによる抵抗測定と抵抗計による抵抗測定の違い・使い分けを説明。バッテリーテスターによる電池内部抵抗測定例(バッテリーのインピーダンス測定)をご説明します。

01. 抵抗測定と低抵抗測定

アナログテスターによる抵抗測定方法

アナログテスターの抵抗測定回路を右図に示します。

抵抗Rxを測定する前にテストリード同士を短絡させてゼロ調整を行ってください。この操作によりテスター内部の抵抗値を補正することができます。

Rxに電圧がかかっている場合は短絡事故になりますので、必ず確認をしてください。

アナログテスターは、抵抗Rxを接続したときの電流計Aの変化で抵抗値を読み取ります。

デジタルテスターの2端子測定法と抵抗計の4端子測定法

デジタルテスターの抵抗測定方法のほとんどは2端子測定法です。一定の電流を流して抵抗R0の抵抗値を電圧計により読み取りますが、配線抵抗のr1とr2を含んだ抵抗値を測定してしまいます。

この影響を少なくするために抵抗R0を測定する前に、テストリードを短絡させてゼロ調整を行う必要があります。

しかしこの方法でもテストリードと測定物との接触抵抗の影響を取り除くことができません。また抵抗R0の抵抗値が低いと正確な測定ができません。

4端子測定法では一定の電流を流す回路と電圧計の回路が、測定対象の両端まで独立しています。 測定対象へ4端子接触しますと、r1からr4の配線抵抗の影響を無視できます。
ただしやむを得ず4端子測定法が適用できない場合(測定対象に接触する部分が2端子になってしまう場合)、 4端子を適切に短絡させてゼロ調整を実行すれば接触抵抗や配線抵抗の影響を除去できます。

直流抵抗を測定する4端子測定法はHIOKI製品の場合、一部のベンチトップ・デジタルマルチメータと抵抗計にのみ採用している測定方法です。

抵抗計の温度換算機能

どんな物体でも温度により抵抗値が変化します。抵抗計で測定する対象の持つ温度が一定とは限りませんから一律の検査を実施するには温度の影響を取り除くことが必要です。

抵抗計に接続された温度センサの温度値tから、基準温度t0との差を読み取り、測定した抵抗値に補正をかけて表示させる機能が抵抗計の温度補正機能になります。

この設定には抵抗計に温度係数を設定する必要があります。

軟銅線の場合、0.00393/℃の係数を設定します。(HIOKI製抵抗計の基準採用値)
物質による温度係数の詳細は弊社抵抗計の取扱説明書を参照願います。

電線の抵抗計による抵抗測定

電線は長さにより抵抗値が変わるので、導体抵抗 [Ω/m] という単位が用いられます。

盤内配線で用いられる弱電ケーブル AWG24 (0.2sq) の導体抵抗は、0.09 Ω/m です。

電力ケーブル AWG6 (14sq) 0.0013 Ω/m であり、150sq の電線では、0.00013 Ω/m になります。

右図において

S: 面積 [m2] L: 長さ [m] ρ: 抵抗率 [Ω・m]  としたとき、電線の全体の抵抗値は、 R = ρ × L / S となります。

02. バッテリーテスターによる電池内部抵抗測定とそのほかの応用測定

電池内部抵抗測定の原理

バッテリーテスター(3561, BT3562, BT3563, BT3564, BT3554など)は、測定周波数1kHzの交流電流定電流を与え、交流電圧計の電圧値から電池の内部抵抗を求めます。
図のように電池の+極と−極に交流電圧計を接続する交流4端子法により、測定ケーブルの抵抗や接触抵抗の影響を抑えて、正確に電池の内部抵抗を測定することができます。

内部抵抗が数mΩといった低抵抗も測定可能です。
また電池の直流電圧測定(OCV)では、高精度な測定が求められますが、0.01%rdg.の高精度測定を可能にしています。 

バッテリインピーダンスメータBT4560は、1kHz以外の測定周波数を設定し可変できるため、コール・コールプロットの測定から、より詳細な内部抵抗の検査を可能にしています。
また電池の直流電圧測定(OCV)では、測定確度0.0035%rdg.を実現しています。

バッテリータイプによる内部抵抗値と電池電圧値、適用できるバッテリーテスター

電池の内部抵抗(IR : Internal Resistance)と電池電圧(OCV : Open Circuit Voltage)を測定できるバッテリーテスターのラインナップと、適用できる電池の種類を図にしました。


小型電池セルや携帯機器向け電池パックは内部抵抗が数10mΩ~数100mΩで、電圧も低いため3561をお勧めします。EV・HEV向けの大型電池セルは内部抵抗が低いためBT4560BT3562が最適です。


電池パックの測定では、測定器の定格入力電圧に注意する必要があります。DC60Vまでの電池パックの場合はBT3562、DC300Vまでの場合はBT3563、それ以上でDC1000VまでであればBT3564を使用します。


そのほかニッケル水素電池(Ni-MH)、鉛蓄電池、ニッカド電池などの二次電池の内部抵抗と電池電圧の測定ができますが、電池電圧(OCV)でバッテリーテスターの選定をしてください。


電池パック(組電池・スタック電池・電池モジュール)の内部抵抗測定

電池は必要な電圧を得るために複数のセルを直列に接続して必要な電圧を得ています。いわゆる電池パック(または、組電池、スタック電池、電池モジュールなど)は、セルを接続するためにタブや、バスバーを溶接して接続しています。

電池パックの内部抵抗測定ではこの溶接抵抗も含まれます。
正常に溶接できていないと電池パックの性能を十分発揮できなくなるため、電池パック状態の電池においても、バッテリーテスターでの検査をお勧めします。

BT3562は、最大60Vまでの電池パックの内部抵抗測定ができます。またBT3563は、最大300Vまでの電池パックの内部抵抗測定ができます。

電池のコール・コールプロット測定

電池の内部抵抗は一般的に大きく分けてのオーミック抵抗(溶液抵抗)、反応抵抗(電荷移動抵抗)、拡散抵抗(ワールブルグインピーダンス)の3つに分けられます。
これらは一般的にコール・コールプロット(ナイキストプロット)の測定によって求めることができます。

コール・コールプロットの測定には、測定周波数を100mHz~1.05kHzの範囲で可変できるバッテリインピーダンスメータBT4560が最適です。
電池の実効抵抗RとリアクタンスXを測定できます。
標準付属のPCアプリソフトでコール・コールプロットを描画することができます。
またLabVIEWでは、簡単な電池の等価回路解析ができます。

そのほかの用途: 電気二重層キャパシタ(EDLC)のESR測定

電気二重層キャパシタ(EDLC)のうち、バックアップ用途に用いられるクラス1に属するものは、内部抵抗を交流で測定します。またクラス2、クラス3、クラス4では簡易測定として用いられます。
BT3562は、測定電流の周波数1kHzで最大3.1kΩまでのESRを測定できます。

JIS C5160-1 では測定電流の規定があります。測定電流をJISに合わせる場合にはLCRメータIM3523で測定で測定します。
BT3562は測定レンジごとに測定電流が固定されてしまいます。

リチウムイオンキャパシタ(LIC)のESR測定

リチウムイオンキャパシタ(LIC)や電気二重層コンデンサ(EDLC)を充放電した直後は、再起電圧により電位が安定しません。この状態で、ESRを測定すると再起電圧の影響を受けて測定値が安定しない場合があります。

バッテリハイテスタBT4560の電位勾配補正機能を使用すると、この再起電圧の影響をキャンセルするので、安定したESRの測定が可能です。

バッテリハイテスタBT4560は最小分解能0.1μΩで、1mΩ以下の低ESRのリチウムイオンキャパシタや電気二重層コンデンサでも測定ができます。

ペルチェ素子の内部抵抗測定

ペルチェ素子は直流電流を流すことで冷却や加熱、温度制御をしています。ペルチェ素子の内部抵抗を測定する場合、直流電流で測定すると、測定電流によりペルチェ素子内部で熱移動や温度変化が発生してしまうため安定した内部抵抗測定ができません。

交流電流で測定することにより、熱移動や温度変化を低減して安定した内部抵抗測定が可能になります。

BT3562は、測定周波数1kHzの交流電流で内部抵抗測定ができるので、数mΩといった低抵抗のペルチェ素子の内部抵抗が測定可能になります。

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