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太陽光パネルや発電装置の施工およびメンテナンスに必要な測定器の紹介と、施工・メンテナンスにおける選定方法・使い方などを紹介します。
太陽光発電のメンテナンスにおける具体的な点検項目のガイドラインとして「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」(JM16Z001)が発行されました。
太陽電池パネル(ストリング)の点検項目は、まず大きく発電性能に関するものと、安全性に関するものの二つに分けることができます。左表はJM16Z001を参考に分類したものです。
JM16Z001では、接触抵抗とストリング電圧/電流確認、IV曲線測定が、発電性能に関する項目として挙げられていますが、IV曲線を測定することでストリング電圧/電流も知ることができるため、実質接触抵抗とIV曲線測定の二項目となります。
接触抵抗については発熱の原因となり、最悪の場合火災に発展する可能性があるため、単純に発電性能に関するものと言い切ることはできません。
安全性に関するものとして代表的なものは絶縁抵抗測定で、絶縁抵抗が小さいと感電事故が起こる可能性があります。
またバイパスダイオードの故障もダイオード自体の発熱やホットスポットの発生を招き、こちらも最悪の場合、火災につながる可能性があるため、安全性に関するものに分類することができます。
バイパスダイオードの故障点検にまで言及しているのはJM16Z001の特長で、IEC62446-1の影響といえます。
IV曲線測定は「天気が良くないと行えない」といった欠点がありつつも、太陽光発電における最も基本的な測定であり、メーカー保証期間内のモジュールの交換の際、異常であることを証明するためのデータとしても使用される重要なものです。
しかしながら、測定された曲線から異常の有無や内容を把握するには若干専門的な知識を必要とするため、経験が浅い管理者は異常が判別できないといった問題や、発電事業主に異常を説明する際に事業主に理解してもらえないなどの問題がまれに生ずることもあり、管理者はしっかりとした知識を身に着ける必要があります。
左図にIV曲線の例を示します。IV曲線は太陽電池(ストリングあるいはモジュール:以下太陽電池)の電流-電圧特性を測定し、縦軸に電流、横軸に電圧をとったグラフ上に描かれる曲線であり、得られた特性曲線から発電の異常を見つけ出すことができます。
一般によく見るIV曲線は電流/電圧ともに正であり、数学的には第1象限と呼ばれる領域のもので、この領域は太陽電池が発電している領域であるため、発電性能を示す曲線になります。
IV曲線は電流が正、電圧が負となる領域(第2象限)と電圧が正、電流が負となる領域(第4象限)に拡張することができ、第2象限は太陽電池の発電と同じ方向に電圧を印加したときの特性を示し、バイパスダイオードの開放検出に利用される領域で、第4象限は太陽電池の発電とは逆方向の電流を流した時の特性で、この領域はEL発光検査で使用される領域です。
左図に発電領域のIV曲線を示します。
一般的に測定される発電領域におけるIV曲線の重要な測定要素を挙げます。
開放電圧(Voc): 太陽電池が電流を流していない状態の電圧
短絡電流(Isc): 太陽電池を短絡したときに流れる電流
最大出力動作点(Pmax): IV曲線上の電流と電圧の積が最大となる点。パワーコンディショナは太陽電池が常にこの点で動作するよう制御されます。
最大出力動作電圧(Vpm): 最大動作点における電圧
最大出力動作電流(Ipm): 最大動作点における電流
曲線因子(F.F.:Fill Factor): 最大出力(Pmax)をVocとIscの積で割ったもの。
これらの値が通常から逸脱している場合は、影など、日射に異常があるか、太陽電池そのものに異常があることになります。
しかしながら,これらの測定要素だけでなく、IV曲線の形状が異常を示す場合があるため注意が必要です。
JM16Z001にはI-V曲線が示す異常についての記載があるため、その詳細はJM16Z001を参照していただくと良いと思います。
JM16Z001には絶縁抵抗の測定方法として二つの方法が記されています。
太陽電池の正極と負極を短絡して対地間の絶縁抵抗を測定する方法と、正極と負極を短絡せずに正極と接地間を測定した後、負極と接地間を個別に測定する方法です。
影などの影響で太陽電池のどこかで発電していない部分があった場合、その部分で発熱することが容易に予測できるため、長時間の短絡は好ましくありません。しかしながら太陽電池は一種のフォトダイオードであり、定電流源として扱われるため、正極と負極を短絡すること自体は問題になりません。正極と負極を短絡するこの方法は、これまでの絶縁抵抗計を使用して正確な抵抗値を測定することができる方法ですが、10A程度の電流を短絡するため、アークが飛ぶ危険を伴います。
これを回避するためには、電圧Voc、電流Isc以上の容量を持つ継電器が必要になります。太陽電池が発電していない夜間に測定する場合は容量の小さな継電器を使用することが可能ですが、夜間は視界が悪いなど、別の意味での危険が伴うため注意が必要です。
この方法は太陽電池の正極-負極を短絡しないため、継電器も不要で簡単に測定できますが、PV用のモードを持つ絶縁抵抗計以外を使用する場合は、正しい値を測定できない場合がります。
これは、これまでの絶縁抵抗計は電位をもったものの測定を想定していないことによるものです。
左図は太陽電池の正極-接地間の絶縁抵抗を測定する例で、負極-接地間が地絡している場合を想定したものです。いま、正極-接地間の絶縁抵抗を測定するため、正極、接地それぞれに絶縁抵抗計の測定端子を接続すると、負極が地絡を起こしているため、太陽電池が発電した電流が地絡抵抗と絶縁抵抗計を通って流れる閉回路を形成することになります。このため、太陽電池が発電した電流が絶縁抵抗計に流れ込むことになり、この電流を想定していない絶縁抵抗計では正しい測定ができません。
一般の絶縁抵抗計が測定用に出力する電圧は負極性となっています。この例では測定電流と太陽電池が発電した電流が同じ方向に流れるため、測定電流が増加することになり、結果として絶縁抵抗が小さく測定されることになってしまいます。
負極-接地間の測定で、正極が地絡を起こしている場合では、太陽電池が発電した電流と測定電流がそれぞれ反対方向に打ち消し合うように流れることになり、測定電流が減少します。
結果として、絶縁抵抗が大きく測定されることになり、こちらは最悪の場合、地絡を起こしているにもかかわらず、絶縁抵抗が無限大と表示されることも起こりえます。
これらの現象は絶縁抵抗計を接続することで、発電された電流が流れる閉回路が形成されることから起こる現象です。
正極-接地間の測定で正極が地絡している場合や、負極-接地間の測定で負極が地絡している場合、絶縁が良好で地絡を起こしていない場合は、発電した電流が流れる閉回路は形成されないため、正しく測定できることになります。
正極-接地間の測定のあとに負極-接地間を測定するよう順番が記載されているのは、地絡があった場合に負極-接地間を測定すると太陽電池を壊す可能性があるためといわれています。
そのため、先に正極-接地間を測定し、異常があった場合、負極-接地間を測定してはなりません。
太陽電池が発電した電流が流れる閉回路が形成された場合でも、正確に絶縁抵抗を測定できるように設計された絶縁抵抗計がIR4053/IR4055です。
IR4053は通常の絶縁抵抗測定モードと、太陽電池が発電する電流の影響を排除するように設計されたPVΩモードを持つ絶縁抵抗計で、通常の絶縁抵抗測定モードはJISC1302に適合しています。
PVΩモードは太陽電池ストリングにおいて地絡があった場合でも正確な値を測定することができます。
IR4055はIR4053にBluetoothの通信機能を持たせたもので、測定結果をタブレット端末に無線で送信することができます。有償/無償のアプリケーションを使用することで、測定結果の報告書作成の手間を減らすことができます。 ※ 太陽光パネル・発電・PVメンテナンス測定器の「製品一覧」は、こちらを参照願います。
太陽電池の一部がごみや影等で発電できなくなった場合、その部分は負荷になり、発電効率が低下するだけでなく、発熱し、火災に発展してしまう可能性があります。
これを防ぐため、通常太陽電池にはバイパスダイオードが搭載されています(左図参照)。
発電した電力を効率よく取り出せるよう、発電していない部分を文字通り「バイパス」させるためのダイオードです。このダイオードが故障しているかどうか試験することがJM16Z001には記載されています。 ※ 太陽光パネル・発電・PVメンテナンス測定器の「製品一覧」は、こちらを参照願います。
一般的な太陽電池の構造を左図に示す。
バイパスダイオードが短絡故障した場合,そのバイパスダイオードが接続されている部分(クラスタと呼ばれる)が短絡されることになり,この部分が発電した電力が取り出せなくなる。一般的な結晶系太陽電池では,バイパスダイオードが短絡故障すると1個あたり約10V,開放電圧が低下するため,開放電圧を精度よく測定することは短絡故障を検出する有効な手段となる。同一構成の太陽電池ストリングの開放電圧を比較し,10V程度電圧が低い場合はバイパスダイオードの短絡故障が考えられるが,開放電圧の低下はバイパスダイオードの短絡だけではなく,ごみや影等で発電していない場合や,太陽電池そのものが壊れている場合も考えられるため注意が必要である。バイパスダイオードの開放故障は,ごみや影等で発電できない部分があった場合火災となる危険性があるため,簡単に効率よくこの故障を検出できる方法が切望されていた。短絡故障と違って太陽電池の単純な発電性能の測定では検出できないため,昼間に開放故障を検出するには,JM16Z001に記載があるよう,太陽電池の一部を遮光し,バイパスダイオード一個一個について調べなければならず,大きな手間をかける必要があった。また,第2象限のIV曲線を測定することでもバイパスダイオードの開放故障を検出できるが,この部分のIV曲線を測定するには大きな電源が必要とされるなどの課題があり,現場レベルでの測定は困難であった。これらの問題のため,危険性が指摘されているにも関わらず,バイパスダイオードの開放故障検査はあまり行われていないのが現状である。
バイパスダイオードテスタFT4310は、これまで困難とされていた日射下でのパイパスダイオードの開放故障検出を現場で簡単に行うことができます。
その検出原理は「IV曲線の概要」で述べた第2象限のIV曲線に基づくものです。
また1000Vシステムの10Vの電圧の違いを見つけられるよう、高精度の直流電圧計も搭載していて、開放故障だけでなく、短絡故障も検出することができます。次にその詳細を説明します。
開放電圧(Voc)/短絡電流(Isc)の測定:
開放電圧を精度よく測定することで、バイパスダイオードの短絡故障を検出することができます。また大容量の短絡開閉器を必要とせずに短絡電流を測定することができます。
※短絡故障検出は開放電圧測定によるため、日射下でないと測定不可です。
バイパスダイオードの開放検出:
短絡電流(Isc)+1Aの電流を流すことができるかどうかを判断することで、ストリング単位で昼夜を問わず、バイパスダイオードの開放故障を検出することができます。
バイパスルートの抵抗測定:
バイパスルートとは、バイパスダイオードを含むバイパス電流が流れるルートのことですが(図8参照)、このバイパスルートの抵抗が測定できます。
この中には太陽電池間のコネクタの接触抵抗や配線路の抵抗、バイパスダイオードのオン抵抗や、劣化に伴う抵抗も含まれます。
原理上、精度は期待できませんが、数Ωの抵抗であれば,検出可能です。しかし発電部(太陽電池セル)の抵抗は測定できません。
バイパスダイオードの開放検出が可能であっても太陽電池を壊してしまっては意味がないため、測定時にストリングに与える影響については充分検討されています。
最初にIscを測定した上で、Isc+1Aの定電流制御であること、印加時間が数msと短いこと、その測定原理から、ストリングに与える影響はIV曲線を測定する場合や、短絡して絶縁抵抗を測定する場合とほぼ同じ程度で、太陽電池を壊すことはありません。
JM16Z001には同一構成の他のストリングと比較することで異常の有無を確認するため、ストリング電流と称し、太陽電池ストリングの短絡電流の測定と動作電流の測定について記載されています。
この測定は発電性能に関する点検とも考えられますが、JM16Z001に「発電性能測定とすべきではない」との記載があるため、安全に関する点検の一部としてください。
JM16Z001はこの測定項目について、その目的により、発電性能とするか安全に関する点検とするかを分けています。 ※ 太陽光パネル・発電・PVメンテナンス測定器の「製品一覧」は、こちらを参照願います。
太陽電池ストリングの短絡電流はストリングを安全に短絡/開放できる継電器が必要となります。
短絡については「正極と負極を短絡する方法」を参照してください。(間違っても電流計を直接太陽電池にあてることはないように注意してください。)
充分な遮断容量がある継電器があれば通常の直流電流計でも測定可能ですが、FT4310を使用することで、バイパスダイオードの開放検査と一緒に継電器不要で測定することができます。
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・ ガイドラインTR228による絶縁抵抗測定
・ 測定における注意事項
・ 一般の絶縁抵抗計での問題点
・ IR4053の紹介
・ PVΩファンクション
・ 操作手順
https://www.hioki.co.jp/jp/support/seminar/#16