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高信頼性、高効率モーター製造向け 部分放電検出器 ST4200 および 高電圧リレーボックス SW2001 を発売

掲載年月日:2025年2月20日


部分放電検出器ST4200(左)、高電圧リレーボックスSW2001(右)

HIOKI(日置電機株式会社:長野県上田市、代表取締役社長:岡澤尊宏)は2月20日、モーター試験の精度と効率を高めることを目的とした、部分放電検出器ST4200と高電圧リレーボックスSW2001を発売します。このソリューションは、市場の拡大により高い信頼性が求められている、電気自動車(EV)および産業用のインバーター駆動モーターを対象にしています。

部分放電検出器 ST4200 は、正確で効率的なモーターの部分放電*1(PD)検出が可能です。デュアルモード部分放電検出によりモーターの潜在的な絶縁不良を生産段階で検出し、出荷後の故障リスクを低減します。高い耐ノイズ性能により、モーター生産現場の厳しい環境でも正確なPD検出が可能です。

高電圧リレーボックス SW2001 は、計測回路の自動切り替え装置です。ST4200をはじめとした複数の試験器を接続することにより、多くのモーター試験を1つのシステムに集約します。チャネル数を選択できる柔軟な設計で、複数のモーターを同時に試験できるため、検査効率が大幅に向上します。また、堅牢で信頼性の高いマルチプレクサ設計は機器の故障による停止時間を減らし、大量生産が求められるモーター製造現場の生産性向上に貢献します。

■開発の背景
世界的な脱炭素化への動き
世界的な脱炭素化への移行により、EVや高効率産業システムに向けたモーターの市場が拡大しています。2024年には、バッテリーEVとプラグインハイブリッドEV(PEV)の世界販売台数は前年比25.6%増となり、12月だけで190万台に達しました*2

高まる高効率モーターの需要
欧州などの地域では、エネルギー効率向上を目的としてIE4以上の高効率モーターの使用が規制により義務付けられています*3。国際電気標準会議(IEC)は、IE1からIE4までの電気モーターの効率クラスを定義しています。IE4モーターは最も高効率かつ低電力消費で、下位クラスのモーターと比べ運用コストが低くなります。一方で、通常これらのモーターはインバーターで駆動されるため、連続的な高いサージ電圧により絶縁不良のリスクが高まります。

先進のパワー半導体技術の台頭
インバーターに使用されるシリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などのパワー半導体は、高速・高電圧のスイッチング動作*4を可能にします。その際モーターには定格動作電圧の2~3倍のサージ電圧がかかり、長期的に継続することで潜在的な欠陥が故障につながるおそれがあります。 SiCおよびGaN市場は、2024年の14億1,000万ドルから2034年には110億8,000万ドルに成長し、年平均成長率は22.9%と予測されています*5


インバーター駆動モーターシステムにおけるサージ電圧と部分放電現象

部分放電(PD)試験の重要性
従来、モーターの絶縁不良検出は50/60 HzでのAC高電圧試験が標準でした。近年のインバーター制御の普及により、高効率モーターの動作状態を模擬した試験方法として、PD試験が注目を集めています。現在PD試験は潜在的なモーター絶縁不良の検出方法として不可欠な試験となりつつあります。

ノイズの多い環境における課題
PD試験ではこれまで、電磁波検出方式が用いられてきました。しかしモーター生産現場などのノイズが多い環境において、電磁波検出方式では試験結果の再現性が課題となっていました。
また、最新のモーター生産現場では、生産性向上のために高電圧での試験と低電圧での試験を1つの試験システムで効率的に切り替える必要があり、システムの集約と制御の複雑化という課題が発生しています。

信頼性の高いHIOKIのPD試験ソリューション
これらの課題に対処するために、当社は高周波電流トランス(CT)技術を採用し、ノイズの多い環境でも信頼性の高いPD試験を実現する部分放電検出器ST4200を開発しました。
また、試験の集約により複雑化する配線や制御を合理化するため、高電圧リレーボックスSW2001を開発しました。従来の一般的な試験システムでは高電圧リレー部品の交換といったメンテナンスコストの課題もありましたが、SW2001は高い信頼性設計によりメンテナンスを減らし、効率的な運用を実現します。


■製品の特長
1. デュアルモード部分放電検出
ST4200はAC PD*6とインパルスPD*7の2種類の部分放電検出機能を備えています。モーターの潜在的な欠陥をより正確に特定して、発火などの重大な故障を最小限に抑えることができます。AC PD試験は、相間および相-コア間の絶縁試験に適した方法です。また中性点を含む相間の絶縁試験にはインパルスPD試験を用いることで、部分放電を効果的に検出できます。


 
モーターステーターの3つの部分放電試験箇所(巻線間、相間、各相とステーターコア間)

2. 高周波電流トランス(CT)によるノイズに強い検出方式
ST4200の高周波CTを用いた部分放電検出は、生産ラインにおけるPD試験中のノイズ干渉を最小限に抑えます。従来の電磁波検出方式における課題に対応し、ノイズの多い環境が試験結果に与える影響を低減、信頼性の高いインパルスPD試験を可能にしています。

3. 高電圧リレーボックスSW2001との統合
ST4200 と 高電圧リレーボックスSW2001との組み合わせは、ノイズの多い環境への対応にも効果的です。複数の入力信号をSW2001に統合することでケーブルの長さと本数を最小限に抑え、複雑な配線を大幅に削減します。この組み合わせにより電磁妨害(EMI)、グラウンド・ループ、容量結合などの潜在的なノイズ源が軽減され、より正確で信頼性の高い計測が可能になります。

4. 試験要件に合わせて選択可能な4、8、16、24チャネルモデル
SW2001シリーズには4、8、16、24チャネルのモデルがあり、多様な試験要件に対応可能です。 抵抗、インダクタンス、レアショート、耐電圧、絶縁抵抗、部分放電(AC PDおよびインパルスPD)の6種類の試験に対応する複数の機器を接続することで試験システムを統合し、モーター試験を合理化できます。リレーボックスにより頻繁な配線作業が不要になるため、複数のモーター試験を並行して行うのに最適です。SW2001-24モデルは、それぞれに2つのサーミスタ温度センサーを内蔵した三相モーターを、最大3台まで同時に試験できます。

 
SW2001リレーボックスによる効率的なモーター試験。最大24チャネルでシームレスに試験を統合し、
三相モーターの同時試験をサポート

5. 高い信頼性と長寿命のマルチプレクサ設計
SW2001は高電圧信号(最大8 kVpeak)を最小限の漏れ電流で安全に切り替えできる耐久性の高い高電圧リードリレーを採用しています。正確な計測を確実に行うため、堅牢な絶縁設計、リレー間のクリアランス距離の最適化、高品質の絶縁材料による配線など多くの絶縁対策をしています。さらに高電圧試験後にモーター巻線に蓄積されるエネルギーによる損傷リスクを最小限に抑え、回路切り替え時に低電圧の試験装置を保護します。

■主な用途
・EVおよび産業用モーター生産における部分放電試験
 高い信頼性と安全性をもった絶縁不良検出
・静特性試験用モーター試験システム構築
 抵抗、耐電圧、絶縁抵抗、レアショート試験などの静特性試験をシームレスに統合
 モーター試験プロセスの合理化と生産効率の向上

■リンク

注:
*1. 部分放電:モーターに高電圧が印加されたときに絶縁材料内で局所的に生じる微小な放電現象。長期的に継続すると絶縁破壊によるモーター故障を起こすおそれがある。
*4. スイッチング動作:直流電圧のON/OFFを高速に切り替えて交流電圧を発生させる、インバーターの動作方式。
*6. IEC 60270およびIEC 60034-27-1に準拠したAC PD試験。
*7. IEC 61934およびIEC 60034-27-5に準拠したインパルスPD試験。


【本件に関するお問い合わせ先】
プロダクトマーケティング部 
TEL: 0268-28-0555(代表)

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