HIOKI(日置電機株式会社:長野県上田市、代表取締役社長:岡澤尊宏)は6月26日、「メモリハイコーダMR8848」を発売します。MR8848は、従来機種MR8847Aを10年ぶりにリニューアルしたモデルとなります。
MR8848の主な用途は、発電所や鉄道など、社会の基盤となるインフラ設備の保全と、トラブルを未然に防ぐための異常解析です。様々な過渡現象(電圧、電流、温度、圧力など)を同時に記録することで、設備の動作状況を詳細に監視し、分析します。 MR8848は、従来機種のメモリハイコーダMR8847Aの特徴であるメンテナンス作業に適応した堅牢性はそのままに、新たに、大容量SSDへの高速記録やイーサネット通信による測定器とPCの連携機能が実装されています。
■開発の背景
再生可能エネルギーの利用拡大と、それに伴う世界的な電化の進展により、社会システムに不可欠な電気インフラのメンテナンスやトラブルシューティングの重要性は、ますます高まっています。 一瞬の停止も許されない電気インフラを確実に維持・管理するためには、複数の電気信号や物理量を同時に記録し、その相関関係を解析することが極めて有効です。
一般的に電気信号の測定にはオシロスコープがよく使われますが、これは主に実験室のような限られた環境での信号観測を目的として設計されています。そのため、電気インフラの現場環境では、いくつかの課題に直面します。 具体的には、屋外での使用に適した耐久性、十分な絶縁性能、長時間の連続記録能力、そして限られた入力チャンネル数などが挙げられます。特に、電位差のある複数の電気系統を測定する場合、計測器内部の回路を介した短絡のリスクも無視できません。
メモリハイコーダMR8848はインフラ現場での安全な測定を目的として設計されています。 入力端子間が絶縁されているため、商用電源や制御回路、センサー信号といった異なる電位の複数系統でも、短絡事故の危険を避けて安全に同時計測が可能です。 また、高速なサンプリングスピードとトリガ機能により、電源電圧の低下、UPSの切り替え、発電機の負荷遮断時の応答など、突発的な波形も確実に記録できます。
通信インターフェースとして1000 BASE-T LAN通信やUSB 3.0への対応による通信速度の向上、また大容量の1 TB SSDやリアルタイム保存機能をオプションに加えることで、長時間・高速測定のデータをデジタル記録可能です。
MR8848は、電力設備の点検、輸送システムの診断、電気インフラの故障解析といった、あらゆる用途において安全で信頼性の高い波形記録を提供します。 妥協のない正確な結果を求められる技術者にとって、MR8848は信頼できるツールとなることを目指して開発されました。
■製品の特長
1. 現場での使用を想定したタフな設計
持ち運び時や作業中の衝撃、万が一の落下にも耐えるよう、堅牢な筐体と本体を保護するプロテクターを採用しています。
2. 長時間波形記録とリアルタイム保存
オプションの大容量1 TB SSDとリアルタイム保存機能を組み合わせることで、波形データを長時間連続記録できます。鉄道車両の試験や、連続評価試験などに最適です。
3. 安全な絶縁多チャンネル測定
MR8848は、入力端子間が絶縁されているため、商用電源と制御回路のように電位差のある複数の系統でも、短絡の危険なく安全に同時測定が可能です。
4. 印刷出力で改ざん防止
オプションの組み込みプリンターで波形を印刷できます。データのデジタル化が進んでいますが、データの改ざん防止を目的としたシーンでは紙による印刷が役立ちます。
5. 複合的な現象の記録と分析による問題解決振動、温度、ひずみといった物理的なパラメーターから、電圧や電流などの電気信号の波形まで、これら全てを1台の測定器で同時に記録・分析できます。複雑な異常現象の根本原因を突き止めたり、複数のシステム間の関連性を把握したりするのに役立ちます。
■主な用途
・UPS動作試験
UPSの動作試験では、意図的に停電状態を作り出し、UPSがどれだけ迅速に切り替わるかを確認し、バックアップシステムの正常性を検証します。MR8848は、単相および三相の電源ラインにおいて高速な過渡応答を記録できます。
・水力発電の負荷遮断試験
発電機の負荷が突然遮断された状況を模擬し、正常に稼働が停止するかを検証します。電圧、タービンの回転速度、圧力、バルブ動作など多くのパラメーターを同時記録し、負荷の喪失から規定の時間内にタービンが正常に停止することを確認します。
・高圧回路遮断器のタイミング評価
変電所など送電系統の遮断機が動作する際、三相各接点の応答時間差が規定内におさまっているか確認します。時間差の自動演算機能により測定後すぐに数値を表示させることができます。
・鉄道車両診断
実際の運転条件下での鉄道車両の性能を評価します。製造された車両の走行試験時にモーター電流、ブレーキ圧力、異常振動など複数のパラメーターを測定し、安全で効率的な運行を保証します。
■リンク
【本件に関するお問い合わせ先】
日置電機株式会社 プロダクトマーケティング部
TEL: 0268-28-0555(代表)
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