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インバーター駆動モーターの光と影:高効率化と部分放電

インバーター駆動のモーターは制御回路とモーターを組み合わせたシステムです。交流電源を直流電源に変換し、変換された直流電源を⾼速なスイッチングで制御し、モーターの速度や電流などを制御します。商⽤電源で駆動するモーターよりエネルギー効率が良いことが特長です。エネルギー効率が求められる今、家電、乗り物などさまざまな用途に使われています。

しかし、インバーターの高速なスイッチング制御は、モーターに電気的な負荷をかけ、劣化を進行させるおそれがあります。図1に示すようにインバーターの高速なスイッチング動作によってサージが発生します。また、このインバーターサージは、インバーター駆動電圧の約2倍の電圧に達することもあります。モーター巻線間に高電圧が瞬間的に加わり、ある電圧を超えると巻線被覆表面で放電が発生します。これを部分放電と呼びます。



図1:高速なスイッチングによるサージの発生

部分放電はなぜ起こるのか

図2に示すように、インバーター駆動モーターの基本要素にはローター(回転子)とステーター(固定子)があります。ステーターは、ステーターコアに巻線が挿入され成形されます。巻線の導体はエナメル被覆で覆われて、線同士は絶縁されています。モーター生産の段階で何ターンか巻いた導体は、絶縁紙によってステーターコアと絶縁されます。製造過程での絶縁紙のズレや破れ、皮膜の破れや潰れによる線同士の接触、更に巻線とステーターコアとの接触などにより、絶縁性が低下してしまい、部分放電が起きる要因となります。絶縁層内のボイド(絶縁物質が局所的に気泡や不純物などで欠落した部位)や導体についたキズも部分放電が起きる要因として考えられます。



図2:インバーター駆動モーターの一般的な構造

部分放電の危険性

電気自動車に代表される高電圧インバーター駆動のモーターでは、部分放電の発生リスクが高まります。一般的に、適切な絶縁がされていない巻線に約350 Vを超える電圧がかかると部分放電が発生するといわれています。これは、インバーター駆動モーターだけでなく、高電圧の産業用モーターなども部分放電のリスクがあることを意味します。モーター巻線内に絶縁性の低下した箇所が存在すると部分放電が発生し、これが長期間繰り返し生じることで絶縁劣化が進みます。この部分放電による絶縁劣化が、短絡や絶縁破壊による重大な事故(発火など)につながる原因となります。



部分放電を検出するには?

部分放電は部分放電試験で検出することができます。部分放電試験には、表1に示すように2種類の試験があります。それぞれの試験は発見できる絶縁不良の場所が異なるので、どちらも実施することが重要です。

表1:部分放電試験の種類

試験の種類 説明 目的
AC部分放電(ACPD)試験 交流電圧を用いる部分放電試験。
50 Hzや60 Hzの高電圧源(耐電圧試験器)を使うため、インパルスPD試験に比べ長時間高電圧がDUTに印加できます。このため、相間(Phase to Phase)や巻線とステーターコア間(Phase to Core)での部分放電検出に適しています。ただし、同相内の巻線間での放電検出(Turn to Turn)は難しく、中性点接続後はステーターコア間(Phase to Core)でのみ試験ができます。
内部放電、沿面放電、異物混入を確認するための試験
インパルス部分放電(インパルスPD)試験 インパルス電圧を用いるインパルス部分放電試験。
中性点接続の前後に関わらず、相間(Phase to Phase)、巻線とステーターコア間(Phase to Core)、同相内の巻線間(Turn to Turn)のすべての箇所で試験ができます。特に、AC PD試験で難しい同相内の巻線間(Turn to Turn)での放電検出も可能なため、巻線内の軽微な不良検出に適しています。
インバーターサージ電圧に対する耐性を確認するための試験

部分放電は次の場所で発生します:

  1. 同相内の線同士に生じる電圧差により放電(Turn to Turn)
  2. 異なる相間での線同士の接触により放電(Phase to Phase)
  3. 線とステーターコア間での触れにより放電(Phase to Core)


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従来のインバーター駆動モーターの製造ラインでは電気的な劣化要因を検出するために、絶縁抵抗試験、耐電圧試験、インパルス試験(レイヤーショート/レアショート試験)などを行ってきました。耐電圧試験やインパルス試験は絶縁破壊がすでに起きている不良品を発見することはできますが、絶縁破壊に至る前の軽微な絶縁不良による微弱な放電を検出することはできません。そのため、従来の試験に加えて高精度な放電検出性能を持つ部分放電検出器が必要です。部分放電試験により絶縁破壊に至る前の潜在不良を検出することで、モーターの品質と信頼性のさらなる向上が図れます。

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