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モーターの製造の品質を高める6つの電気的な試験

図1:モーター製造工程

モーター製造プロセスは、図1に示す通り、おもにローター組立、ステーター組立、およびモーター組立の3つの段階で構成されます。高品質なモーター生産を保証するために、各段階で厳密な機械検査および電気検査が行われます。それぞれの組立工程の後には、安全性と性能を評価するために静的および動的評価が行われます。
この記事では、ステーターと完成したモーターに対して行われる6つの静的電気試験について詳しく説明します。

6つの静的電気試験

  1. 低抵抗測定
  2. インダクタンス測定
  3. 絶縁抵抗試験
  4. 耐圧試験(耐電圧試験)
  5. レアショート試験(レイヤーショート試験)
  6. 部分放電試験

低抵抗測定

モーター内に使われている巻線の品質、サーミスターの性能、部品間の接続品質は抵抗値を測定することで確認できます。 巻線の抵抗を測定することによって、線材の太さや巻数の間違い、巻線の短絡や断線、溶接不良を検出することができます。サーミスターの抵抗を測定し、正しい部品が適切に搭載されていることを確認します。巻線、サーミスター、部品の溶接品質の抵抗を測定するために抵抗計が使われています。



試験を実施する工程 試験箇所
ワニス含侵後の検査 巻線
ステーターASSYの検査 巻線、 サーミスター、ステーター部品の溶接
モーター完成品の静的検査 巻線、 サーミスター

インダクタンス測定

巻線のインダクタンスを測定することによって巻線の相間のバランスを検査することができます。バランスが取れていないとモーターの回転ムラや駆動ドライバーとの不整合が起きます。インダクタンスはLCRメーターで測定できます。

試験を実施する工程 試験箇所
ワニス含侵後の検査 巻線

絶縁抵抗試験

絶縁抵抗試験は絶縁抵抗値が規定以下の不良品を特定し、感電事故、短絡故障を防ぐために実施します。絶縁抵抗計または絶縁抵抗測定機能を持つ耐電圧試験器を使用して、絶縁抵抗値を測定することができます。工程によって、絶縁試験を実施する箇所が異なります。



試験を実施する工程 試験箇所
ワニス含侵後の検査 コイルとコイル間
ステーターASSYの検査 コイルとコア間
モーター完成品の静的検査 ステーターと外装間

耐圧試験(耐電圧試験)

耐圧試験は、モーターの駆動電圧に対して十分な耐電圧を持たない絶縁不良品を特定するために実施します。コイルと人が触れる部分の筐体(コア)に十分な絶縁耐力があるかどうかを検査します。耐圧試験は、通常、絶縁抵抗測定よりも高い試験電圧で実施します。耐電圧試験器は、交流電圧または直流電圧を印加し、漏れ電流を計測することで絶縁破壊の有無を判定します。この試験には、耐電圧試験器を使用します。

試験を実施する工程 試験箇所
ワニス含侵後の検査
  • コイルとコイル間
  • 各相とコア間
ステーターASSYの検査 ステーターとほかの部品間
モーター完成品の静的検査 ステーターと外装間

レアショート試験(レイヤーショート試験)

レアショート試験は、インパルス試験とも呼ばれます。インパルス(高電圧)を印加することで、コイルの巻線の被覆の絶縁性能の有無を検査します。抵抗やインダクタンス測定で見つけることが難しい、レアショート(1-ターンショート)を検出します。インパルス試験器を使用して、レアショート試験を実施します。

試験を実施する工程 試験箇所
ワニス含侵後の検査 同一相のコイル間
ステーターASSYの検査 同一相のコイル間

部分放電試験

部分放電試験(PD試験)は絶縁破壊に至る前の微弱な部分放電を検出し、耐圧試験でわからなかった潜在的な不良を検出します。部分放電の発生による潜在的な絶縁不良のあるモーターを特定し、絶縁破壊によるモーターの故障のリスクが低いことを保証するために行われる試験です。部分放電試験には、交流の高電圧を印加する部分放電試験とインパルス電圧を印加するインパルス部分放電試験の2種類の試験があります。それぞれの試験は発⾒できる絶縁不良の場所が異なるので、どちらも実施することが重要です。部分放電試験を実施するには部分放電検出器を使います。そのほかに、AC高電圧電源として耐電圧試験器(AC PD試験)、インパルス電源としてインパルス巻線試験器(インパルスPD試験)が必要です。



試験を実施する工程 試験箇所
ワニス含侵後の検査 AC PD試験:【2】異相間(Phase-to-Phase)、【3】相接地間(Phase-to-Core/Ground)
ステーターASSYの検査
  • AC PD試験:【3】相接地間(Phase-to-Core/Ground)
  • インパルスPD試験:【2】異相間(Phase-to-Phase)、【1】同一相内のコイル間(Turn-to-Turn)
モーター完成品の静的検査
  • AC PD試験:【3】相接地間(Phase-to-Core/Ground)
  • インパルスPD試験:【2】異相間(Phase-to-Phase)、【1】同一相内のコイル間(Turn-to-Turn)

HIOKIが提案するソリューション

HIOKIでは上記の6つの電気的な試験に該当する試験器と計測器を提供しています。

検査 測定器 特長
低抵抗測定 RM3545A
  • モーター・トランスの巻線抵抗を4端子法で高精度に測定できる
  • 温度による抵抗値の変化に対応した温度補正機能を搭載
インダクタンス測定 IM3533
  • 測定周波数を1 mHz〜200 kHzで可変できるLCRメーター
  • 巻線インダクタンスの測定結果と、設定した基準値を比較し判定結果を表示できる
絶縁抵抗試験 3153
  • 絶縁抵抗を試験電圧 DC50 V〜1200 Vの範囲で設定し測定できる
  • 試験終了時に被試験品に充電された残留電圧を放電します
耐圧試験(耐電圧試験) 3153
  • AC耐圧試験の最大印加電圧:5 kV/100 mA
  • 試験電圧値までの上昇時間と下降時間を設定し出力できる
レアショート試験 ST4030A
  • 高精度に波形を検出: 200 MHz, 12bit
  • 応答波形を数値化し、従来の波形比較よりも高精度にレアショートを検出
部分放電試験 ST4200
  • IEC規格に準拠したAC部分放電とインパルス部分放電を検出
  • 既存の耐圧試験器やインパルス試験器と組み合わせて使用できる

またHIOKIでは、ステーターやモーター完成品の電気的な検査を統合できる専用リレーボックスSW2001も提供しています。
SW2001は高電圧試験*1と4端子低電圧測定*2が共存したモーター検査システムにおいて安全な切り替えを実現しました。

高電圧試験に起因する回路の故障や計測値への影響などを解決し、生産ラインの中断を大幅に削減できます。
そしてSW2001は、過酷な利用シーンを想定した厳しい試験により高耐久性を実証しました。メンテナンス作業に関わる時間とコストを削減しシステム全体の信頼性向上が図れます。

*1 絶縁抵抗試験、耐電圧試験、レアショート試験、部分放電試験
*2 巻線抵抗測定、インダクタンス測定


おわりに

モーターの品質を上げるためには、早い段階で電気的試験を行い、問題を解決する必要があります。HIOKIでは、この課題を解決するためのソリューションを豊富に取り揃えております。 モーター計測に関するお悩みは、ぜひHIOKIにご相談ください。

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