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デュアルモーターシステムの性能評価:大幅な工数削減を実現

1台で8chの高確度、広帯域電力測定

PW8001製品イメージ

近年、ガソリンエンジンが主流だった自動車やバイクなどの乗り物は、電動化に向けた開発が盛んに行われています。また、自然エネルギーを活用した発電に関しても、新たな技術の開発と普及が世界各国で進んでいます。このような、脱炭素社会の実現に向けた開発努力は、今後さらに加速していくことが予想されます。

電気自動車や自然エネルギー発電におけるモーターやインバーターの開発は、0.01%にも満たない小さな電力変換効率改善の繰り返しです。わずかな電力の変化を正確に計測できなければ、機能改善の効果が確認できないので、非常に高確度な電力測定が必要になります。HIOKIのパワーアナライザPW8001は、高いサンプリング性能とノイズ耐性で、SiCパワー半導体の高速スイッチングによる電力変動を正確に捕捉します。世界最高クラスの測定確度を持ち、電力変換効率を正確に評価することが可能です。そして、電気自動車の駆動システムとして「デュアルモーターシステム」が注目を集める開発現場において、1台で8chの電力を測定できるPW8001は多系統化が進む装置の測定工数を大幅に削減します。

デュアルモーターシステム搭載イメージ

大電力を利用する装置に欠かせないパワーアナライザ

電気自動車や自然エネルギー発電では、少しでもエネルギーを有効に活用するため、わずかなエネルギー損失も無くし、エネルギー変換効率を出来る限り上げることが必要です。損失や効率の評価を行うには、電力の測定が欠かせません。そこで必要になるのがパワーアナライザです。

パワーアナライザは、モーターやインバーターなどの電気機器で使用する電力を測定する測定器です。一般的な電力計とは異なり、電流、電圧、トルク、回転数などの様々なパラメーターを同時に高速、高確度でサンプリングし、電力損失や電力変換効率、モーター特性、装置の応答性能や周波数解析などの評価を行うことができます。電気自動車や自然エネルギー発電の開発では、必要不可欠といえる測定器です。

パワーアナライザへの性能要求

従来のパワーアナライザには幾つかの課題がありました。

測定確度、再現性への厳しい要求

効率や損失の改善が重視されるモーターやインバーターの開発では、従来製品よりもより優れたものを短期間で開発しようと、小さな性能改善を繰り返して積み重ねていきます。例えば、電気自動車の駆動モーターであれば、100kWクラスのモーターに対して、数ワット単位で性能を高めていきます。非常にわずかな改善の積み重ねです。このわずかな性能改善を再現性よく、正確に測定することができなければ、改善によりもたらされた数値の変化なのか、偶然に現れた数値の変化であるのか判断できません。機能の向上と共に、測定器に求められる測定確度や測定再現性は年々厳しくなっています。

EVモーターイメージ

さらなる高周波、高電圧対応と、ノイズ耐性

電気自動車や自然エネルギー発電のような大電力を扱う装置の制御には、高電圧、高速スイッチングに対応したパワー半導体が活用されてきました。近年、SiCやGaNのような次世代パワー半導体への置き換わりが急速に進み、更なる高電圧化、スイッチングの高速化が進行中です。

高電圧化すれば、それを安全に測定できる測定器が必要になります。スイッチングが高速化すれば、測定周波数も高周波化するので、より広い周波数帯での測定が必要です。高周波になれば、よりノイズ耐性を強化する必要も出てきます。

多系統化対応

電気自動車のデュアルモーターシステムや、スマートハウスの電力融通システムなどでは、エネルギーを有効活用するために多系統化が進んでいます。例えば、電気自動車の駆動システムであるデュアルモーターシステムの性能評価では、フロントモーターとリアモーターの連動が重要です。「フロントとリアのモーターパワー」、「各モーターに付随するインバーターの入出力電力」を同時に測定しなければなりません。

測定には、各測定箇所用のチャンネルが必要です。しかし、1台の測定器に必要な数だけチャンネルが無い場合、複数台の測定器が必要となり、測定データ更新のタイミングを合わせることが難しくなります。このことは、効率や損失の測定安定性を低下させ、測定時間やデータ統合にかかる工数の増大を引き起こします。

デュアルモーターシステム計測イメージ

1台で全ての問題を解決

PW8001は、従来の測定器が直面する問題に全て対応しています。

世界最高クラスの測定確度

わずかな電力の変化を正確に評価するには、DC から高周波まで、各帯域の電力を正確に測ることが重要になります。そこでポイントになるのが、測定器の測定確度です。PW8001は、基本確度±0.03%、 DC確度±0.05%、 50 kHz確度0.2%の、世界最高クラスの電力測定確度を備えています。50 Hz/60 Hz や、DC 、50 kHzなど広い周波数帯域にわたって優れた測定確度をもち、電力変換効率を正確に評価できます。

PW8001製品イメージ

高いサンプリング性能と高ノイズ耐性

次世代パワー半導体の高速スイッチングを高精度に測定するには、高いサンプリング性能と高ノイズ耐性を測定器が備えている必要があります。PW8001は、サンプリング周波数15 MHz、サンプリング分解能18-bitの、優れたサンプリング性能を備えています。また、110 dB/ 100 kHzの高いノイズ耐性も備えているので、高周波数でノイズの多い測定対象でも、電力を再現性よく測ることが可能です。

電流センサーの位相特性を自動で補正

大電力を扱う装置の電力測定では、電流センサーの性能も重要です。電流センサーの性能は、電力測定の確度と作業効率に大きく影響します。測定結果の再現性の確保のためにも必要になります。 HIOKIはパワーアナライザだけでなく、電流センサーに関しても自社で開発、製造しています。HIOKI製のパワーアナライザと電流センサーを連携させることで、最適な性能を引き出せます。

デュアルモーターシステム構成イメージ

また、従来は電流センサーごとに補正値を入力していた位相誤差を、パワーアナライザ側で自動補正する機能を搭載しています。同じ型式で僅かに異なる個体差も、自動で補正されます。これにより、補正忘れがなくなり、測定準備の工数も削減され、測定確度と再現性が高まります。

HIOKIの電流センサーイメージ AC/DCカレントセンサCT6904Aの位相特性の補正例

DC 1500 V CATⅡ/ DC 1000 V CATⅢに対応

PW8001は高電圧を直接入力して安全に測定できる、DC 1500 V CATⅡ/ DC 1000 V CATⅢに対応しています。今後、更に高電圧化が進む、電気自動車や自然エネルギー発電用の各種装置の測定にも十分に対応できます。

1台で8chを測定

PW8001は、1台で8chの電力測定を行うことができます。例えば、電気自動車のデュアルモーターシステムでは、2つのモーターパワー(2系統のトルクと2系統のエンコーダ出力)を同時に測定が可能です。それによりデュアルモーターシステムの性能を効率的かつ高い再現性での測定を実現します。PW8001は多系統化する次世代のモーターやインバーターの測定に1台で対応できます。

HIOKIの電流センサーイメージ

実測例

パワーアナライザPW8001-11(モーター解析機能付き)と電流センサーを使用して、フロントとリア2つのモーターパワーと各モーターに付随する2つのインバーターへの電力入出力を測定し、それぞれの電力効率と損失を測定しました。

HIOKIの電流センサーイメージ

HIOKIの電流センサーイメージ
効率測定画面例
前輪モータ (Pm1) の効率だけ 94.2% とやや低く、3.4 kW もの損失が発生していることが分かる

HIOKIの電流センサーイメージ
波形解析画面例
(1.フロントインバーター入力、2.フロントインバーター出力、3.リヤインバーター入力、4.リヤインバーター出力、5.リヤエンコーダパルス)

これからの要望にも応えられるパワーアナライザ

今後のEVを実現する技術として、インホイールモータを用いた4モーターによる駆動システムが想定されます。PW8001は、トルク計、回転計から信号を入力し、4つのモーターを同時に解析できる「4モーター解析モード」を搭載しています。それにより各車輪を制御するシステムの評価に対応しています。また、高確度や高電圧、高周波数などへの対応以外にも、お客様の課題解決のための機能追加、改良を進めています。

例えば、測定対象の更なる多系統化に対応するため、2つのPW8001を光ケーブルで接続することで、2台の測定値を1台に集約する機能が搭載されます(*1)。これにより、最大16chの電力を同時に解析し、効率や損失を1台に表示して記録できるようになります。

自動車業界向けとしては、測定データをCAN/CAN FD 信号としてデータ出力できる機能が搭載されます。(*1) これにより、電圧や電流、効率、損失だけでなく、バッテリーやモーターなどの各種ECUのデータを含め、車に係わるあらゆるデータを、時間のズレなく一元化し、総合的な評価が実現できます。

*1:この機能はPW8001 Ver.2.00で対応予定です。

人や物を移動させる手段は、自動車やバイクに限らず、建設機械や船、飛行機に至るまで電動化が進んでいます。自然エネルギー発電についても脱炭素社会に向け、普及が進むとともに、発電効率も年々高まっています。HIOKIは、電力を活用する様々な装置の効率的なエネルギー活用に役立つため、今後も様々な形で製品開発を進めてまいります。

また、HIOKIでは、お客様の需要に応えられる機能を備えた測定器を幅広くそろえています。デモ機も用意していますので、機能や性能を試してみたいお客様は是非お問い合わせください。解決したい測定の課題や、気になる測定器などありましたら、お気軽にご相談ください。

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