セルの電圧と温度データの記録に最適なデータロガー
高電圧バッテリーの充放電試験
バッテリーセル 、モジュール、パックの開発段階および評価段階での性能試験で、バッテリーの充放電試験を行います。この試験ではバッテリーの充放電性能や寿命を検査します。安全で高性能なバッテリーの開発や、完成品の性能確認に欠かせない検査です。バッテリーパックの充放電試験では、各セルの電圧や温度に異常がないかを試験したり、バッテリーの特性を評価します。セルの特性のばらつきによってバッテリーパック全体の性能低下を招くため、セル単位で電圧や温度の挙動を把握することはきわめて重要です。充電時間の短縮や航続距離の延伸のために、EVに搭載されるバッテリーパックの高電圧が進んでいます。この記事では、標準的な400 Vのバッテリーパックと、すでに実用化が進んでいる800 Vのバッテリーパックの充放電試験に最適なデータロガーをご紹介します。
この試験に求められるデータロガーの性能バッテリーパックの各セル電圧は約4 Vと低いですが、例えば800 Vのバッテリーパックの各セル電圧の測定には、対地間最大定格電圧DC 800 V以上の測定器が必要です。800 Vのバッテリーパックを構成するには約200個のセルが直列に接続されていることになります。すべてのセルの電圧と温度を測定するには、約400チャネルが必要になります。
特に絶縁性能においては、連結した計測モジュール間電圧や対地間電圧は耐電圧とは異なることに注意が必要です。耐電圧とは、安全規格上、耐圧試験で電圧を印加される対象機器が電源OFFの状態で1分間印加して壊れないことを保証する電圧のことです。常時その電圧がかかっても問題ないということではないため、耐電圧800 Vを謳っている製品であっても、モジュール間または対地間に常時800 Vの電圧がかかるバッテリー電圧を測定できるということとは異なります。
バッテリーの充放電試験に最適なデータロガー
HIOKIのデータロガーLR8101, LR8102は、高電圧化するバッテリーの充放電試験に最適なデータロガーです。必要な絶縁性能やサンプリング速度、チャネル数に応じて、測定モジュールM7100またはM7102を必要な台数組み合わせて測定します。
データロガーLR8101, LR8102は、バッテリーの各セルの温度と電圧を安全かつ詳細に測定し、記録できます。ロガー本体と測定モジュールを組み合わせて、入力チャネル数を最大3000 chまで簡単に拡張できます。EN IEC 61010 安全規格に準拠したDC 1500 V CAT IIの絶縁性能で、高電圧システムを安全に測定できます。最高サンプリング速度5 msかつ高分解能で、電圧変動を詳細に捉えることができます。LR8102は測定したデータを1データ毎に高速出力できます。充放電試験中の電圧と温度をリアルタイムにモニタリングできます。
LR8101, LR8102が充放電試験に最適な理由は以下の5つです。
1. チャネル数を簡単に増設できる高い拡張性
データロガーと測定モジュールをそれぞれ2種類ご用意しています。連結するモジュール数を増やすことで簡単にチャネル数を増設できます。さらに、LR8102は最大10台までサンプリング同期できます。LR8102とM7102を組み合わせると最大で3000 chまでの拡張が可能です。右図はM7102を10台連結した状態のLR8102を、光同期ケーブルで10台同期したシステム例(20 msサンプリング)のイメージです。(サンプリング速度は使用するチャネル数によって制限されます。)
2. EN IEC 61010 安全規格に準拠したDC 1500 V CAT IIの絶縁性能で安全に測定できる
バッテリーパックの各セルの電圧や電極の温度を測定する際、対地間(入力チャネル-大地間)や、計測モジュール間には高電圧が印加されます。HIOKIの電圧・温度モジュールM7100は、新規設計の絶縁トランスにより、入力チャネルと大地間でDC 1500 Vの絶縁を実現しています。定常的な高電圧だけでなく過渡的な電圧サージにも耐える、安全性と信頼性を保証します。
3. 高速サンプリングと高分解能で電圧変動を詳細に捉える測定モジュールM7100の最高サンプリング速度は5 ms、M7102の最高サンプリング速度は10 msです(それぞれ使用するチャネル数によって制限されます)。バッテリーセル電圧の変動を詳細にとらえるため、モジュール毎に18 bit分解能のADコンバータを搭載しています。そのため、チャネル数を増やしても最高サンプリング速度は落ちません。また、バッテリーからデータロガーへの漏れ電流を最小限にするために、2 Vレンジおよび6 Vレンジでは測定モジュールの入力抵抗を100 MΩに設計しています。
高速サンプリングかつ高分解能の測定で、電圧変動を詳細に捉えることができます。
[測定分解能と確度]
2 V f.s.レンジで測定する場合:分解能20μV、確度± 1 mV
6 V f.s.レンジで測定する場合:分解能60μV、確度± 3 mV
4. ノイズ耐性を向上し、正確で安定した測定を実現高電圧、大電流を扱う充放電試験器はノイズを発生しやすく、充放電試験の測定はノイズの影響を受けやすいです。データロガーLR8101, LR8102は従来機種よりもさらにノイズ耐性を向上しました。高電圧や高周波のノイズ環境下でも、測定値がシフトしたり大きく変動することなく、安定して測定できます。
5. 試験中の電圧と温度をリアルタイムにデータ出力測定したデータをバッテリー制御のシミュレーションシステムに取り込む場合、データをシステムに高速で出力する必要があります。
通常、データロガーからシステムへデータを取り込むには通信コマンドを使用します。テキストコマンドを使用してデータを取得するスピードは、数十ms~数百ms毎のデータ取得が限界です。
図1は、一般的なデータロガーでの測定とデータ出力のタイミングの例です。電圧値はt7でしきい値を超えていますが、t9のタイミングまでそのデータを取得することができません。
図2は、データロガーLR8102での測定をデータ出力のタイミングを示しています。LR8102は、通信プロトコルにUDPを採用しており、データの高速出力ができます。測定データを1データ毎に出力し、全データをリアルタイムに解析できます。t7でしきい値を超えたデータも即時に取得できます。
データロガーの構成例
データロガー本体と計測モジュールを組み合わせます。必要な絶縁性能やサンプリング速度、チャネル数に応じて、計測器の種類と接続するモジュール数をお選びください。サンプリング速度は使用するチャネル数によって制限されます。
標準的な用途:400 Vのバッテリーパック(4 V × 100セル)の場合400 Vのバッテリーパックで各セルの電圧と温度を測定し、充放電試験器にデータ転送する場合の測定器の構成例をご紹介します。M7102は1台で30 chまで測定できます。省スペースかつ、少ない投資で実現できる計測システムです。
[計測器の構成]
データロガーLR8101 × 1
電圧・温度モジュールM7102 × 7
[測定の条件]
チャネル数:電圧100 ch + 温度100 ch
サンプリング速度:100 ms
データ転送インターバル:200 ms*
データ通信:LANによるテキストコマンド転送
*テキストコマンド転送のデータ転送インターバルは、構成する計測モジュール数によって制限があります
高度な評価システム:800 Vのバッテリーパック(4 V × 200セル)の場合高電圧800 Vのバッテリーパックで各セルの電圧と温度を測定し、充放電システムにリアルタイムでデータ転送する場合の構成例をご紹介します。L8102は、光同期ケーブルで接続すれば最大10台までの測定を同期できます。M7100はDC 1500 V CAT IIの絶縁性能で、高電圧バッテリー試験の安全性を保証します。電圧レンジの場合、1モジュールでの使用チャネル数が8 chまでは、最高サンプリング速度5 msで測定し、すべてのデータをリアルタイムに転送できます。充放電システムで監視しているバッテリーの総電圧値に対し、低遅延でのモニタリングを実現します。
[測定器の構成]
データロガーLR8102 × 4台
電圧・温度モジュールM7100 × 39台
光接続ケーブルL6101 × 4
光接続ケーブルL6102 × 1
(充放電試験器から並列に外部サンプリング信号を入力される場合、光接続ケーブルは不要)
[測定の条件]
チャネル数:電圧200 ch + 温度200 ch
サンプリング速度:5 ms(電圧), 10 ms(温度)
データ転送インターバル:5 ms
データ通信:UDPによるリアルタイムデータ転送
まとめ
HIOKIのデータロガーLR8101, LR8102と測定モジュールM7100, M7102は、バッテリーの充放電試験に最適な計測器です。確かな絶縁性能は試験の安全性を高め、信頼性のある計測で正確なデータ取得し、バッテリーパックの開発およびバッテリー周辺システムの開発をサポートします。
この製品について、詳しくはHIOKIのウェブサイトの製品ページをご覧ください。
デモ機のリクエストやアプリケーションに関するご相談は、HIOKIの担当者にご連絡ください。
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