マルチMPPT インバーター電力変換効率の高安定な測定方法
はじめに
太陽光発電(PV)システムの発電量を最大化することは、需要家を含むステークホルダーにとって非常に重要です。太陽光モジュールから発生するエネルギーはばらつきがあるため、その発電量を監視し、常に最大化するための制御が求められます。これを実現するために使用されるのが、MPPT(最大電力点追従)制御をストリングごとに搭載したインバーターです。
このアプリケーションノートでは、特にストリングインバーターと呼ばれるマルチMPPT インバーターの電力変換効率を測定する際に、M7103 の同期ソース共有機能がどのように有効であるかを紹介します。
課題
PVインバーターの容量が大きくなることでDC入力のストリング数が増加しています。すべてのストリングの電力を測定して、変換効率を算出するために多数の電力計が使用されるケースがあります。しかし、各電力計間の演算区間を揃えることは難しく、多点電力において効率を安定した状態で測定することができません。その結果、高効率のインバーターでは効率が100%を超えてしまうことがあります。効率を正確かつ安定して測定することは、PVインバータの品質や信頼性の向上に必要不可欠です。
前提知識
電力計のデータ更新タイミングについて
電力計は同期ソースをDC以外に設定したとき、対象とする同期ソースのゼロクロス検出後のデータ更新タイミングで測定値を更新します。データ更新間隔内にゼロクロスを検出できない場合は測定値は更新されません。
電力計は同期ソースをDC に設定したとき、データ更新間隔内の波形から演算され、データ更新タイミングで常に測定値が更新されます。
同期ソースは電力計の設定から選択することができます。
効率値が安定しない原因
複数の電力計が使用される場合、各電力計ごとのデータ更新タイミングで電力を測定し効率を算出するため、安定した効率値を得ることができません。そのため各電力計のデータ更新タイミングを揃えることが重要です。ただし、データ更新タイミングを揃えるだけでは不十分なケース
があります。その理由について、以下で説明します。
電力計でAC の同期ソースを持つ場合、 AC 電力は下図のゼロクロスタイミングで切り出した波形から演算され、測定値が更新されます。DC の同期ソースを持つ場合、DC 電力はデータ更新間隔内の波形から演算され、データ更新タイミングごとに測定値が更新されます。
上図の波形のように、瞬間的に波形が変動した場合、DC電力とAC電力とで演算される区間が異なるため、タイミングによっては効率が100%を超えてしまうケースが発生します。このように、データ更新タイミングを揃えるだけでは、効率を正確かつ安定して測定することはできません。
NEW 同期ソース共有機能
この課題を解決するために、同期ソース共有機能が開発されました。同期ソース共有機能を使用して、各電力計間で演算区間を同期した場合、DC電力とAC電力の演算区間が一致します。その結果、正確かつ安定して効率を測定することができます。
同期ソース共有機能を使用することで、瞬時的に波形が変動した場合でもDC の演算区間をAC の演算区間と同期して電力演算できるため、効率100% を超えることはありません。
同期ソース共有機能 アプリケーション例
M7103は同期ソース共有機能を使用することで、2台以上の電力計が必要な電力測定シーンで優れた安定性を得られます。マルチMPPTインバーターのような多点電力測定が要求されるアプリケーションに最適なソリューションを提供します。
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