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硫化物系材料・水分に敏感な嫌水性材料の
全固体電池計測ソリューション
HIOKIの粉体インピーダンス測定システムは、粉末材料を最大60 kN(764 MPa)で圧粉しながら、電池材料の研究において重要とされるインピーダンス、厚さ、プレス圧の3つを同時に測定します。 本システムはコンパクトな設計により、空間的制約のあるグローブボックス(またはドライチャンバー)内の設置・運用ができます。グローブボックスからサンプルを一度も取り出すことなくすべての作業を完結できるため、バッテリー開発プロセスにおける安全性、確実性、作業効率を大幅に改善します。特に、電気自動車向けの次世代電池として実用化が期待されている硫化物系全固体電池の研究に対して大きな価値を提供します。
開発背景 エネルギー消費の最適化と持続可能なエネルギーへの転換は、今や私たちが直面する大きな社会課題です。この課題を解決するためには、再生可能エネルギー由来の電気エネルギーの利用を広げることが重要です。現在、化石燃料に依存しているエネルギー消費を再生可能エネルギー由来へと効率よく移行させるためには、特に輸送分野での電動化が求められています。その中でも、プラグインで充電できるバッテリー式電気自動車 (BEV) の普及を進めることが効果的な方法となります。 液体電解質を採用したリチウムイオン電池は、40年以上にわたって大きな技術的進歩を遂げてきました。多くの電気自動車 (BEV) には、このタイプの電池が搭載されています。しかしながら、現在市販されているBEVに対する消費者の不満はBEVの普及を妨げる大きな要因となっています。消費者が不満に感じる理由には、航続距離、充電時間、車両コストのバランスの悪さ、そして安全性への懸念があります。これら4つの課題は液体電解質のリチウムイオン電池に大きく起因する課題でもあります。
航続距離を伸ばし、充電時間を短縮し、手頃な価格で安全性を確保した電気自動車 (BEV) を実現するためには、次世代バッテリーの実用化が求められています。このため、材料や製造プロセスに関する研究が盛んに行われています。現在、車載向けの次世代バッテリーとして有望視されているのが、固体電解質を使用した全固体電池です。固体電解質の材料としては、硫化物系、酸化物系、ハロゲン化物系 (ハライド系)、ポリマー系などが検討されています。特に、硫化物系とハライド系の全固体電池は、高温での焼結処理をせずに高性能を実現できるため、商業的な量産化が早期に期待されています。製造プロセスでは、有機溶媒を使わないドライ電極や電解質を練り込んで粘土状にしたクレイ型電池などのドライ系の技術がコスト削減に大きく貢献すると期待され、研究が進められています。
液体の電解質(電解液)にはセパレーターと呼ばれる薄い絶縁膜が必要です。セパレーターが破れると内部短絡が起こり、電池の熱暴走や火災の原因になります。また、電解液は非常に燃えやすい性質と熱によって劣化する性質を持っています。この電解液を固体電解質に変更することでこれらの弱点の克服が期待されています。また、固体電解質を採用することで電極の活物質の材料の選択肢が広がり、性能面のブレイクスルーも期待できます。
革新的なオールインワン測定システム驚くほどコンパクトな計測システムはグローブボックス内に簡単に組み込むことができます。また、そのコンパクトさによりグローブボックス内の貴重な作業空間を圧迫しません。充填から圧粉、測定に至るすべてのプロセスにおいて、材料がグローブボックスの外に出ることは決してありません。つまり、外部の大気中に含まれる水分から完全に遮断されます。 これにより、厳密に管理された環境下ですべてのプロセスを完了できます。材料の測定結果の安定性と確実性が高まります。研究者は余計な作業や懸念をすべて排除することができ、安心して分析に専念できる研究環境を手に入れられます。
非常に軽量で小型のテストフィクスチャと小型プレスユニットにより、設置空間だけでなく、作業空間もコンパクトになります。
硫化物系の粉体材料は空気中の湿気と反応すると有害な硫化水素ガスを放出します。また、ハライド系の粉体材料は高い吸湿性を持ち、その水分で溶解してしまいます。そのほかにも電池に使われる材料の多くは水分と反応することで変質するリスクがあります。 現在、研究者はこれらのリスクを避けるために、水分を遮断する密閉型のテストセルに材料を充填してグローブボックスに出し入れする作業に多くの労力を割いています。グローブボックスの中ですべてのプロセスを完結できる本システムは、安全リスクと材料変質リスクの悩みから研究者を解放します。
材料と作業者の移動を無くすことで、さまざまなリスク要因がなくなります。作業者は作業に集中できます。
最大プレス圧 764 MPa(φ10 mm 電極)を誇るプレスユニット SA9003は、ユーザーの期待するプレス圧条件を確実に実現します。本システムは、粉体の圧縮状態を制御しながらインピーダンス、厚さ、圧力を同時に測定できます。これら3つの重要なパラメータを用いた多次元分析は、かさ密度、イオン伝導性、および導電性の関係に関して貴重な洞察を与えます。これらの洞察は、柔軟性と結着性に優れ、割れにくい固体電解質の開発に役立ちます。また、正極合材の最適な配合比を特定することにも役立ちます。 本システムのインピーダンス測定方法は、2端子法です。 粉体の上下に配置されたφ10 mmの電極間で交流のインピーダンス測定をします。電極にも高プレス圧がかかるため、粉末成形でも使用される強度が高い超硬合金を使用しています。
プレスユニットとテストフィクスチャの中に測定に必要なセンサと電極が組み込まれており、プレス作業と同時にすべての測定が完了します。
研究を進めるためには仮説と実験を繰り返す必要があります。全固体電池の研究を加速させるためにはプレスの圧力条件や材料の配合比を変えながら、多くの実験を行う必要があります。しかしながら、従来はグローブボックス内で圧粉を行った後、試料を外部に取り出して特性評価を行う必要がありました。さらに測定後の試料は再利用できないため、プレス圧条件ごとに1つのサンプルを消費していました。つまり、作業時間の長さと試料の消費量が評価コストを増大させていました。このことは研究者が実験回数を増やすことの障壁となっていました。 HIOKIの粉体インピーダンス測定システムは、グローブボックス内ですべてのプロセスを完結できます。例えばこれまで約2時間以上かかっていた実験作業を10分程度に短縮することを期待できます。さらにプレス機構と電気計測用の電極が一体化しているため、1つのサンプルに対してプレス圧を変えながら連続的な測定が可能となり、試料の消費量も大幅に削減できます。研究者は限られたリソースを効率的に活用しながら、より多くの実験ができます。
1つのサンプルに対してステップアップで圧力条件を変えられ、各条件の測定データをまとめて取得、その場で分析ができます。
本システムは複数のユニットで構成されています。 ・SA9003:プレス機構、厚み、および圧力を測定するセンサを搭載した小型のプレスユニット ・SA9004-01:粉体材料を充填し、電極を備えた高強度なテストフィクスチャ ・SA2653:統合的に分析する測定ソフトウェア ・SA2654:機械的なパラメータをモニターするセンサユニット ・SA9005:圧粉されたサンプルを取り除くユニット 測定対象により、交流抵抗測定または直流抵抗測定の計測器を選択してください。 ・固体電解質の場合には、交流抵抗測定が必要:IM3570または IM3533 + L2280-01 ・導電助剤の場合には、直流抵抗測定が必要:RM3545A + L2280-03 3機種の測定器を組み合わせることで、広範囲な測定周波数範囲 DC, 1 mHz~5 MHzに対応できます。
硫化物系固体電解質を測定する場合は、IM3570が推奨の計測器です。
材料の投入から、圧粉、測定までの一連の作業をグローブボックス内で完結できます。寸法については、仕様タブを参照ください。 プレスユニット SA9003と測定器をつなぐ接続ケーブルの長さは80 cmです。 (測定器 ー BNCフランジ間:30 cm, BNCフランジ ー プレスユニット間:50 cm) USBケーブル (A-Bタイプ) は、システムに2本標準付属しています。 詳しくは、販売店にお問い合わせください。
図内の注記
*1: 特注でのご提供が可能です
*2: ユーザー様でご準備、または販売店にご相談ください
専用ソフトウェア SA2653には、測定機能とViewer 機能が搭載されています。これにより、計測が完了した後、その場でサンプル間のデータをグラフで比較・分析できます。データを分析するために場所を移動したり、統合したりする手間が省けるので、作業に集中できます。 STEP 1: インピーダンス・厚さ・プレス圧のデータを同時に取得します。 STEP 2: 計測したインピーダンスのデータから全体抵抗を計算します。 全体抵抗を元に、イオン伝導度・導電率・体積抵抗率を算出します。 STEP 3: Viewer 機能で任意の項目のグラフを作成でき、サンプル間のデータを比較できます。
*3: 真密度の入力時のみ
*4: 特定周波数のAC Continuousモードのみ
基本仕様
測定可能周波数 | DC ~ 5 MHz (計測器3種類使用) |
---|---|
荷重印加方法 | 手動操作による (荷重一定制御不可) |
荷重印加範囲 (プレス圧範囲) | 0 ~ 60 kN (0 ~ 764 MPa SA9004-01 電極径φ10 mm 使用時) |
荷重測定確度 | ±3% f.s. |
厚さ測定誤差 | ±10 µm (温度一定環境下, キャリブレーション実施時) (荷重10 kN ~ 60 kN 範囲で、荷重の増加時のみ) |
電極サイズ | φ10 mm (SA9004-01) |
粉体充填部サイズ | φ10 mm, 深さ7 mm |
使用温湿度範囲 | 23℃ ±5℃, 80% RH以下 (結露しないこと) |
定格電源電圧 | AC 100 V ~ 240 V ※SA2654, IM3570, IM3533, RM3545A |
寸法・質量 | 寸法: 図を参照 質量: SA9003 約20.7 kg, SA2654 約2.3 kg ![]() |
形名(発注コード) | 説明 | 価格 |
---|---|---|
SA2653 | 測定ソフトウェア : データ取得・Viewer | お見積り |
SA2654 | センサユニット : プレス圧・変位表示 | お見積り |
SA9003 | プレスユニット : プレス圧・厚さ測定 | お見積り |
SA9004-01 | テストフィクスチャ : 試料充填 | お見積り |
SA9005 | 離型ユニット : 試料取り出し | お見積り |
計測する際は、別売の計測器と接続ケーブルをシステムに組み合わせる必要があります。測定目的に応じて、オプションの計測器と接続ケーブルを別途ご購入ください。
オプションカテゴリー選択
下の選択枠をクリックし、カテゴリーをお選び下さい。該当するオプションの選択肢が表示されます。
接続ケーブル L2280-03
お見積り
BNC-バナナ, ケーブル長 850 mm, DC 60 V
接続ケーブル L2280-01
お見積り
BNC-BNC, ケーブル長 830 mm
抵抗計 RM3545A
¥308,000(税込 ¥338,800)
・最小測定レンジ: 1000 μΩ ・最小測定レンジ確度: 0.045% ・最小分解能: 1 nΩ ・最大測定電流: 1 A
LCRメータ IM3533
¥418,000(税込 ¥459,800)
・¦Z¦, L, C, R 他 ・測定周波数 : 1mHz〜200kHz ・トランス測定
インピーダンスアナライザ IM3570
¥1,012,000(税込 ¥1,113,200)
・¦Z¦, L, C, R 他 ・測定周波数 : 4Hz〜5MHz ・測定時間 : 0.5ms ・周波数スイープ測定とLCR測定を同時実行
※英語、現地語版については、英語サイトをご利用ください。
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