アプリケーション・用途

UPS(無停電電源装置)の多様な動作試験を1 台で

近年の地球温暖化等の気候変動により、落雷による停電や瞬時停電などの頻度が上がっています。精密な装置を扱う工場やデータサーバーなどでは,UPS 設置の必要性はもちろん、万が一の際に確実に動作し安定した電源供給を担保するメーカー性能保証がさらに重要となっています。
UPS の役目は、商用電源にいかなる電源異常が発生しても安定して電源を供給することです。いざという時にその役目を正常に果たすよう、さまざまな電源異常のシミュレーション試験により、確実な動作確認をより効率よく行う必要があります。

課題

UPS には単相から三相まで、また設置対象となる装置、容量、給電方式などの使用環境により、さまざまなタイプがあります。これらをそのシチュエーションに合わせ、多様なシミュレーション試験により給電品質を担保するには、より安全に確実かつ効率的に試験を行う必要があります。

HIOKI の計測器でこの課題を解決
・安全
HIOKI のメモリハイコーダシリーズは、全チャネル間絶縁入力のため、UPS の一次側二次側、またAC/DC の心配をすることなく、多チャネル同時測定が容易に行えます。
・確実
電流測定もクランプセンサを使用し、電圧電流の相関や動作時、復帰時の突入電流を確実に測定できます。高速サンプリング、ロングメモリを備えている点は、一般的な電源品質アナライザーより優ることから、瞬時の高調波から電源復帰時まで比較的長時間に渡る挙動も捉えられます。
・効率的
さらに、任意波形発生ユニットを装着することにより、ファンクションジェネレータで行っていた電源異常シミュレーションと測定を1 台で同時に行えます。

本アプリケーションでは、メモリハイコーダを使用したUPS の評価試験を安全かつ効率的に行う一例をご紹介します。

1. UPS の動作試験の概要

UPS の1 次側の電圧が停電または変動した場合に、2 次側の出力電圧が確実かつ安定した給電になっているかの動作試験をします。具体的には、UPS の1 次側(商用電源側)について以下のような電源異常をシミュレーションし試験します。シミュレーションには、各条件で出力できる交流安定化電源装置を使用します。

・瞬低:瞬時電圧低下(異常により送電を切り離すまでの電圧低下)
・瞬停:瞬時停電(再送電するまでの電圧0 の状態)
・停電
・電源復帰





UPS の動作試験は、「1 次側電圧/ 電流」、「2 次側電圧/ 電流」、「UPS 内部の蓄電デバイス電圧/ 電流」の波形を同時に記録します。それにより瞬時電源異常による2 次側の挙動、電源復帰時の挙動を確認できます。また、蓄電デバイスの端子間電圧/ 電流を記録することで、供給される電流レベルと稼働状態 における電圧レベルの検証ができます。
さらに停電状態が長時間続いた場合、UPS の出力がゼロになるまでの電圧レベルを把握することができます。

2. 多様なシミュレーション試験

■パラレルプロセッシング給電方式の動作試験
UPS が三相タイプの場合は、単相タイプに比べ、さらに測定チャネル数が必要になります。代表的な常時インバータ給電方式のほか、給電の効率と品質を重視したパラレルプロセッシング給電方式では、1 次側2 次側の電圧/ 電流に加え、双方向インバータの入出力、動作時の蓄電デバイスとの相関など、同時多点測定により、さらなる給電品質の向上をサポートします。
パラレルプロセッシング給電方式では、無瞬断でインバータ給電に切り替わることができるため、高速現象が記録できることが条件です。商用電源側のノイズや高調波による電源異常など含め、10 μs( 100 kHz サンプリング)程度の高速記録が可能な記録計が必要です。特に電流波形を正確に取り込むには、高感度・広帯域の周波数特性を備えたクランプセンサを使用することが望ましくなります。
HIOKI は、これらに対応する波形記録計および豊富なクランプセンサを取り揃え、お客様の要望にお応えします。




主な使用機器
波形記録計:メモリハイコーダ MR6000
入力ユニット:アナログユニット 8966 × 4 スロット
入力ケーブル:接続コード L9197 × 7 本
入力ユニット:3CH 電流ユニット U8977 × 3 スロット
電流センサ:クランププローブ 9272-05 × 6 本(交流用)
電流センサ:AC/DC カレントプローブ CT6843A × 1本

※組合せ例であり、測定対象により異なります。(電圧7ch + 電流7ch 同時測定の場合)
電流センサは、電源供給不要のAC 専用カレントプローブもラインナップされています。測定用途、測定箇所により適切なセンサをセレクトする必要があります。


■電源異常シミュレーションによる動作試験を1 台で
メモリハイコーダにオプションの任意波形発生ユニットU8793 を装着することで、任意波形発生と波形測定機能の二役を1 台で同時に実現することができます。UPS で重要となる瞬低や瞬停、またノイズなど電源異常時の確実な動作を保証するには、数多くの異常シミュレーションが必要となります。ファンクションジェネレータ機能のほか、観測した波形をそのまま再現し出力したり、付属の波形作成ソフトで加工し出力したりするなど、電源異常シミュレーションを効率よく行えます。
実働試験を行う場合は、メモリハイコーダからシミュレーションしたい波形を交流安定化電源で増幅し、動作時のUPS の1 次側、2次側の電圧/ 電流、またインバータ等の制御動作を同時多チャネルで測定することで、より実践に近い状況で試験することができます。



主な使用機器
波形記録計:メモリハイコーダ MR6000
出力ユニット:任意波形発生ユニット U8793 × 1 スロット
出力ケーブル:接続ケーブル L9795-01 × 1 本
入力ユニット:アナログユニット 8966 × 1 スロット
入力ケーブル:接続コード L9198 × 2 本
入力ユニット:3CH 電流ユニット U8977 × 1 スロット
電流センサ:クランププローブ 9272-05 × 2 本

※組合せ例であり、測定対象により異なります。 
(単相電源の異常シミュレーションにおいて、UPS の1 次側2 次側の電圧2ch + 電流2ch を
 同時測定する場合の例)
 測定用途、測定箇所により適切なオプションをセレクトする必要があります。


■トリガ機能について
瞬低や瞬停の状態を無駄なく的確に捉えるために、記録計には記録開始のトリガを設定することをお勧めします。
一般的なトリガ機能では、電圧低下(瞬低)を条件にトリガ設定することができません。また、トリガがかかった後からデータ記録を始めてしまうと、肝心なトリガ以前の現象が取得できません。そのため、電圧降下を条件にトリガをかけられる記録計、かつトリガ直前の現象も記録できるプリトリガ機能を搭載した記録計が便利です。
これにより、UPS 動作前後の各パラメータを同一時間軸で記録することができ、動作評価試験には非常に有効です。



メモリハイコーダMR6000 は、電圧降下をトリガに設定できるほか、プリトリガ機能を搭載しています。
複数チャンネルに対してand やor の条件で細かくトリガ設定ができます。

まとめ

• HIOKI メモリハイコーダは、全チャネル間絶縁入力のため、UPS の1 次側2 次側を気にすることなく入力できるほか、現場での対ノイズ性にも優れています。
• 高速サンプリングかつロングメモリ搭載で、インバータの出力波形のほか、高調波やノイズなど、長時間に渡り高速現象の記録ができます。
• 多チャネル同時記録により、各パラメータの相関を容易に確認できます。
• 豊富な種類の入力ユニットを用意しています。必要に応じてユニットやチャネル数を追加できます。
• 電流センサは、自社開発で、DC/AC、高感度/ 広帯域と多種多様に取り揃えているため、最適なセンサをお選び頂けます。また、記録計のユニットに接続するだけで駆動電源の供給もできるなど、自社開発ならではの使い勝手の良さが特徴です。

デモ機のリクエスト、アプリケーションに関するご相談は、HIOKI お問い合わせ窓口までご連絡ください。

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