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ISO 21782:EV 推進コンポーネントのテスト仕様の規格と測定器

カーボンニュートラルの達成のため、電気自動車の普及が急速に伸びています。

国際規格 ISO 21782 は、電気自動車の性能試験方法を公正に評価する目的で定められました。

この資料では、ISO 21782 に基づいた試験を正しく行うための解説をしています。

※本資料はISO 21782 を基に日置電機が独自に作成したもので、ISO 21782 を公式に解説したものではありません。





1. ISO 21872 の概要

2019 年8 月に「ISO 21782:電気自動車-電気推進コンポーネントのテスト仕様」第1 〜3 部、第6 部が発行され、2021 年5 月に第4 部、第5 部、第7 部も発行されました。

各国の自動車用モーターシステムの規格・基準としてJIS D1302, UN R85, TRIAS-99-017-01, GB/T 18488.1/2 などがありましたが、「ISO21782」は国際規格、国際標準になります。「ISO 21782」により、従来の規格ではカバーできない動的動作(加速/減速)を考慮した電気自動車のモーターシステム試験手順を定め、性能と信頼性を公正に比較評価できるようになります。


※ ISO 21782 の詳細については、ISO のホームページを参照してください。規格の細則は日本規格協会より購入できます。(英文のみ)

2. 規格の構成と試験

全7 部の構成と試験内容は以下の通りです。

-1. 第1 部 ISO 21782-1:2019:一般的な試験状態と定義

-2. 第2 部 ISO 21782-2:2019:モーターシステムの性能テスト

 ・インバーターとモーターで構成される「モーターシステム」、入出力電力間の総効率と総損失、システムの各部品の温度上昇、トルク特性、トルクリップル試験

-3. 第3 部 ISO 21782-3:2019:モーターとインバーターの性能テスト

 ・モーター、インバーター、チョッパでの損失と効率および、温度上昇、モーター単体のトルク特性、コギングトルク試験

-4. 第4 部 ISO 21782-4:2021:DC/DC コンバーターの性能テスト

 ・DC/DC コンバーターの損失と効率の測定

-5. 第5 部 ISO 21782-5:2021:モーターシステムの動作負荷テスト

 ・ペアインバーターとモーターの組み合わせで動作するモーターシステムの、仕様上限での繰り返し試験

-6. 第6 部 ISO 21782-6:2019:モーターおよびインバーターの動作負荷テスト

 ・モーター、インバーターの耐久動作試験と、モーターの破壊強度検証試験

-7. 第7 部 ISO 21782-7:2021:DC/DC コンバーターの動作負荷テスト

 ・DC/DC コンバーターの代表的な電流出力パターンによる繰り返し動作試験



動作点

ISO 21782 では試験を行う動作点が定義されており、各試験を行うにあたり動作点は2 秒、10 秒、1800 秒の稼働時間に定められています。





測定パラメータ

各試験には試験図が提示されており、試験により以下のパラメーターを測定します。

-1. 周囲条件として、ISO 21782-1:2019 5.4 で定義されている室温および湿度

-2. モーター、インバーターまたはチョッパの電流、電圧

-3. モーターのトルクおよび速度

-4. 各部品の温度

-5. インバーターの出力周波数

-6. ローター速度


なお、三相電力の測定には3 電力計法が推奨されています。





測定精度と記録間隔

第1 部には以下の記載があります。

-1. 電流:±1.0%、電圧:±0.5%

-2. トルク:±0.2%、モーター速度:±0.5%

-3. 温度:±2 K、相対湿度:±5%

・温度と相対湿度の値を除くすべての測定値は、10 Hz 以上の周波数で測定し記録する。

・温度と相対湿度の値については、1 Hz の測定周波数で記録する。



試験レポート

第2 ~ 7 部の付録として、試験レポートが掲載されています。



3. 試験に必要な測定器

・電圧と電流の測定:電力計(Power meter)

モーターのトルクと速度の測定:トルク/ 速度計(Torque/Speed meter)

 → HIOKI パワーアナライザ(Power analyzer)で電圧、電流、トルク、速度をすべて測定できます。

・温度上昇測定:必要な点数分が測定できる温度計(Thermometer)、環境温湿度計

・サージ電圧測定:ストレージオシロスコープ(Storage oscilloscope)

 → HIOKI メモリハイコーダで、トリガ機能によるサージ電圧波形の取得ができます。

・モーターシステムの動作負荷測定(逆起電力波形と位置センサー原点位置との電気角差が5° 以内であることの確認):回転角検出用の角度センサーにはレゾルバセンサー、ABZ ロータリエンコーダを使用します。

 → HIOKI メモリハイコーダを使えば、レゾルバセンサーやABZ ロータリエンコーダーの電気信号から機械的な回転角の原点位置が測定できます。HIOKI パワーアナライザとABZ ロータリエンコーダーの組み合わせでも同様の測定ができます。


※上記試験システムでは、DC 電源、負荷装置、トルク/ 速度検出器、ダイナモメーターなどが必要です。

 回転角センサーは、レゾルバセンサーまたはABZ ロータリエンコーダーが必要です。



電力計選定の注意点

ISO 21782 の動作点は、「定格速度の50%」から「定格速度に、最大速度から定格速度を引いた値の90% を加えた速度」までと幅広くなっています。また、その際のモータートルクやインバーター電流値、出力電力も定格の40% から100% まであります。インバーターの入力は直流電力です。そのため電力計の性能としては、直流から高回転域までを「電流:±1.0%、電圧:±0.5%」の精度で測定できることが求められます。大電流を測定するためには、上記の周波数領域において「計測器本体+電流センサー」で定められた精度にて測定する必要があります。

三相電力測定では、3 電力計法が推奨されているため、「DC 入力:1CH」+「三相電力:3 CH」合計4 CH 以上の入力を持つ電力計が適しています。

4. 推奨測定器

【電圧・電流・モータートルク・モーター速度測定】

●パワーアナライザPW3390

・電力基本確度 ±0.04%rdg.±0.05 f.s.

・200 kHz の測定帯域と、高周波までフラットな振幅・位相確度

・クランプ電流センサーによる簡単な電力計測

・過渡状態の電力を50 ms 高確度高速演算


電流センサー(高確度貫通タイプ)

● CT6872

・定格電流 AC/DC 50 A , 周波数帯域 DC ~ 10 MHz(-3 dB)

・測定可能導体径 Φ 24 mm 以下

● CT6904A

・定格電流 AC/DC 500 A , 周波数帯域 DC ~ 4 MHz(-3 dB)

・測定可能導体径 Φ 32 mm 以下

● CT6877A

・定格電流 AC/DC 2000 A

・周波数帯域 DC ~ 1 MHz(-3 dB)

・測定可能導体径 Φ 80 mm 以下


※電流センサーのラインアップは、電流センサーシリーズカタログを参照してください。


より高確度測定に 

・パワーアナライザPW6001

・パワーアナライザPW8001



【多点温度測定】

●メモリハイロガーLR8450

●メモリハイロガーLR8450-01(無線LAN 搭載モデル)

・LR8450 にU8552 など5 種類のユニットを4 台まで装着可能

・U8552 4 台による120 チャネルの多点測定可能


●電圧・温度ユニットU8552

・チャネル数:30 CH(スキャン方式)

・最高サンプリング(データ更新):

 10 ms ( 使用チャネル数が15 以下のとき)

 20 ms ( 使用チャネル数が16 ~ 30 のとき)

・測定対象:電圧、熱電対、湿度(Z2000 湿度センサ使用)

・入力端子:押しボタン式端子台


より高速な測定に 

・メモリハイコーダMR8740-50



【回転角の原点位置測定】

●メモリハイコーダMR6000

・高速200 MS/s 絶縁測定、DC 〜 30 MHz 広帯域

(U8976 高速アナログユニット組み合わせ)

・カレントセンサーをダイレクト接続可能な3 CH 電流ユニット等用意

 ほか、各種ユニットも用意

・ロングメモリ容量(1 G ワード)

・波形演算による回転角測定機能

(レゾルバセンサー、ABZ ロータリエンコーダーに対応)


回転角測定用

・レゾルバセンサー

・ロータリエンコーダー


※入力ユニットのラインアップは、MR6000 のカタログを参照してください。

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