製品情報

電流センサーの原理と技術情報

電流センサーの原理、特徴および用途を解説します。電流センサーは、基本技術として、CT (Current transformer) を用いています。それぞれの用途に合わせて、巻線方式、ホール素子方式、ロゴスキーコイル方式、ゼロフラックス方式といった各電流検知方式を駆使して、高性能な電流センサーを実現しています。それぞれの特徴を理解し、用途に合った電流センサーを選定してください。

00. 電流センサーの動作原理別分類

電流センサーの動作原理別分類 一覧

電流センサーの動作原理別分類表

01. 電流センサー(汎用)の測定原理・用途・特徴

巻線方式 (AC) の原理

巻線を用いた電流センサーは、交流(AC)の電流を測定する最も基本的な方式です。

■ 測定導体(1次側)に流れる交流電流( I )により、測定電流による磁束(Φ)が磁気コア内に誘導される。2次電流による磁束(Φ’)は、2次巻線(N)にこの1次磁束を打ち消すように誘導される (自己誘導による逆起電力)。

■ この2次電流はシャント抵抗 (r) に流れ、シャント抵抗の両端に電圧 (Vout) が発生する。
■ この出力電圧は測定電流に比例する (Vout=r/N*I) 。

ホール素子方式 (DC/AC) の原理

ホール素子を用いた電流センサーは、直流 (DC) および交流 (AC) の電流を測定する最も基本的な方式です。

■ 測定導体(1次側)に流れる電流による磁気コア内に発生した磁束(Φ)が、磁気コアのギャップ部に挿入したホール素子を通過することで、ホール効果により磁束に応じてホール電圧が現れる。
■ このホール電圧は小さいため、アンプで増幅して出力する。
■ この出力電圧は測定電流に比例する。

ロゴスキーコイル方式 (AC) の原理

ロゴスキーコイル方式用いた電流センサーは、形状がフレキシブルで、大電流を測定できます。

■ 測定導体(1次側)に流れる交流電流による磁界が、空芯コイルと鎖交することで、空芯コイルに誘起電圧が発生する。
■ この誘起電圧は、測定電流の時間微分値(di/dt)として出力される。
■ さらに、積分器を通すことで、測定電流に比例した出力電圧が得られる。

比較表 (特徴・用途)

 
巻線方式(AC) ホール素子方式(DC/AC) ロゴスキーコイル方式(AC)
原理図
特徴 ・電源不要(電流検出部)
・交流(AC)のみで、直流(DC)は測定できない。
・直流から交流(数kHz)まで測定可能。
・ホール素子の直線性、磁気コアのB-H 特性の影響により、一般的に精度は良くない。
・ホール素子の特性により、温度や経時変化などの要因でドリフトするので、長期の測定に向いていない。
・磁気コアが無いため、磁気飽和せずに大電流を測定可能。
・磁気損失による発熱、飽和、ヒステリシスがない(周波数ディレーティングの影響が小さい)。
・センサ部が空芯コイルのため、フレキシブルに細くできる。
・挿入インピーダンスが小さい(測定回路への影響が小さい)。
・交流(AC)のみで直流(DC)は測定できない。
・ノイズの影響を受けやすく、高精度測定には向いていない。
用途 ・50 Hz/60 Hz クランプ電力計用(汎用)
・各種産業用途における省エネ管理など、商用周波数の電流・電力モニタリング
・DC, 50 Hz/60 Hz 電力計用(汎用)
・乗用車、トラック、バス、フォークリフトなどの輸送機器のバッテリー出力モニタリング。
・各種産業機器における電源設備の定期点検、電源品質の監視、消費電力の把握
・AC 電力計, 波形観測用(フレキシブル, 大電流)
・各種産業機器における電源設備(バスバー)に流れる数千A程度の大電流測定、定期点検、電源品質の監視、消費電力測定
該当製品 クランプオンセンサ 9694, 9660, 9661, 9669
クランプオンリークセンサ 9675, 9657-10
クランプオンセンサ 9661-01, 9695-02, 9695-03
クランプオンプローブ 9010-50, 9132-50, 9018-50
ACカレントセンサ CT7126, CT7131, CT7136, CT7116
AC/DCカレントセンサ CT7631, CT7636, CT7642 (※精度改良品)
AC/DCオートゼロカレントセンサ CT7731, CT7736, CT7742 (※精度および温度ドリフト改良品)
ACフレキシブルカレントセンサ
CT7046, CT7045, CT7044
CT9667-01, CT9667-02, CT9667-03
(※耐ノイズ性改良品)

02. 電流センサー(高性能)の測定原理・用途・特徴

ゼロフラックス方式(磁気平衡方式、ゼロ磁束方式、負帰還方式)とは

※ここではホール素子検出型での説明

  1. 測定導体に流れる電流によって磁気コア内部に磁束(Φ)が発生。
  2. 磁気コア内部で発生する磁束を打ち消すように、2次側の帰還巻線に2次電流が流れる。(帰還巻線の磁束はΦ’)
  3. ただし、DC電流からの低周波領域では、磁束をキャンセルできないため、磁気回路内に残る。(残留磁束はΦ-Φ’)
  4. ホール素子はこの残留磁束(Φ-Φ’)を検出し、残留磁束(Φ-Φ’)を相殺するように、アンプ回路を介して2次帰還電流に加算される。
  5. 2次電流はコイルを通り、シャント抵抗(r)に流れる。この電流は、CT電流(コイルによって発生する電流)とアンプ(ホール素子検出からのフィードバック電流)の合計。その結果、端子間に電圧が発生する。この出力電圧は測定電流に比例する。


ゼロフラックス方式:巻線検出型 (AC) の原理

ゼロフラックス方式(巻線検出型)の電流センサーは、基本的な巻線方式に負帰還回路を追加して、高性能化(高確度、広帯域)を実現した方式です。

■ ゼロフラックス方式では、測定導体に流れるAC電流によって磁気コアで発生する磁束(Φ)を打ち消すように、帰還巻線に2次電流が流れ、2次電流による磁束(Φ’)が誘導される。
■ しかし、低周波領域では、磁束(Φ-Φ’)をキャンセルできないため、磁気回路内に残る。
■ 検出巻線は、この残留磁束(Φ-Φ’)を検出する。続いて、低周波領域の磁束(Φ-Φ’)を打ち消すように、アンプ回路に帰還電流が加算される。
■ このトータルの2次電流がシャント抵抗に流れ、端子間に電圧が発生する。
■ この出力電圧は測定電流に比例する。

ゼロフラックス方式:ホール素子検出型 (DC/AC) の原理

ゼロフラックス方式(ホール素子検出型)の電流センサーは、基本的なホール素子方式に負帰還回路を追加して、高性能化(広帯域、低ノイズ)を実現した方式です。

■ ゼロフラックス方式では、測定導体に流れるAC電流によって磁気コアで発生する磁束(Φ)を打ち消すように、帰還巻線に2次電流が流れ、2次電流による磁束(Φ’)が誘導される。
■ しかし、低周波領域では、磁束(Φ-Φ’)をキャンセルできないため、磁気回路内に残る。
■ ホール素子は、この残留磁束(Φ-Φ’)を検出する。続いて、低周波領域の磁束(Φ-Φ’)を打ち消すように、アンプ回路に帰還電流が加算される。
■ このトータルの2次電流がシャント抵抗に流れ、端子間に電圧が発生する。
■ この出力電圧は測定電流に比例する。

ゼロフラックス方式:フラックスゲート検出型 (DC/AC) の原理

ゼロフラックス方式(フラックスゲート検出型)の電流センサーは、フラックスゲートと負帰還回路を組み合わせることで、高性能化(高確度、広帯域、広動作温度範囲)を実現した方式です。

■ ゼロフラックス方式では、測定導体に流れるAC電流によって磁気コアで発生する磁束(Φ)を打ち消すように、帰還巻線に2次電流が流れ、2次電流による磁束(Φ’)が誘導される。
■ しかし、低周波領域では、磁束(Φ-Φ’)をキャンセルできないため、磁気回路内に残る。
■ フラックスゲートは、この残留磁束(Φ-Φ’)を検出する。続いて、低周波領域の磁束(Φ-Φ’)を打ち消すように、アンプ回路に帰還電流が加算される。
■ このトータルの2次電流がシャント抵抗に流れ、端子間に電圧が発生する。
■ この出力電圧は測定電流に比例する。

ゼロフラックス方式 比較表 (特徴・用途)

   
巻線検出型 (AC) ホール素子検出型 (DC/AC) フラックスゲート検出型 (DC/AC)
原理図
特徴 ・磁気コア内の磁束を打ち消す負帰還動作をするため、磁気コアのB-H 特性の影響を受けず直線性に優れる。
・1 Hzからの低周波領域では検出巻線とアンプによる動作、そして高周波領域では帰還巻線による動作により、広帯域化を実現。
・交流(AC)のみで直流(DC)は測定できない。
・磁気コア内の磁束を打ち消す負帰還動作をするため、磁気コアのB-H 特性の影響を受けず直線性に優れる。
・DCからの低周波領域ではホール素子とアンプによる動作、高周波領域では帰還巻線による動作により、広帯域化を実現。
・自社開発の高性能ホール素子を採用しており、極めて低いノイズを実現。
・ホール素子の特性により、温度や経時変化などの要因でドリフトするので、長期の測定に向いていない。
・磁気コア内の磁束を打ち消す負帰還動作をするため、磁気コアのB-H 特性の影響を受けず直線性に優れる。
・DCからの低周波領域ではフラックスゲートとアンプによる動作、高周波領域では帰還巻線による動作により、広帯域化を実現。
・フラックスゲートは、広い温度範囲で非常に小さなオフセットドリフトを示すため、非常に正確で安定した測定を実現でき、高精度電力計との組み合わせ使用に最適。
・励起電流の周波数と高調波自体がノイズの原因となるため、フラックスゲートを使用した電流センサは、ホール素子を使用した電流センサよりもわずかにノイズが大きい。
用途 ・AC電力計用(高確度, 1 Hz〜)
・各種産業機器における三相交流出力などの電力測定
・DC/AC 広帯域波形観測用(低ノイズ)
・各種産業機器における待機電流、突入電流、負荷電流、制御電流などの波形観測
・DC/AC 電力計用(高確度, 高安定, 広温度範囲)
・ハイブリッド車、電気自動車などの輸送機器における燃費、電費測定
・各種産業機器における高精度電力測定
該当製品 クランプオンセンサ 9272-05電流プローブ CT6710, CT6711, CT6700, CT6701(※自社開発高感度ホール素子採用)
クランプオンプローブ 3273-50, 3276, 3274, 3275(※自社開発ホール素子採用)
AC/DCカレントプローブ CT6841A, CT6843A, CT6844A, CT6845A, CT6846A(※クランプタイプ)
AC/DCカレントセンサ CT6862-05, CT6863-05, CT6872, CT6873, CT6875A, CT6876A, CT6877A, CT6904A(※貫通タイプ)
AC/DCカレントボックス PW9100A (※直接結線タイプ)

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